後編
「アニマ」 後編
俺がチャックスを指差しながら言った。
チャックスは唖然とした表情だった。
「お前がこいつを引き取ってくれないか?」
本題を出した。
こいつだけが俺の唯一の心残りだ。
もちろんツウルなら引き取ってくれるだろうと思った。
しかし返ってきた答えは期待を裏切ったものだった。
「断る。」
「!?・・なんでだよ!」
「チャックスはこれからもお前が育てろ。」
「だから俺はこれから自殺するって言ってるだろう!!」
俺が立ち上がって怒鳴った。
ツウルも立ち上がった。
「たかがチャオ一匹ぐらい一緒だろう!」
「違う!俺が断った理由はそういうことじゃない!!」
「じゃぁ何だよ!言ってみろよ!」
「だからさっきから言ってるだろう!【俺はお前に死んでほしくないんだよ!!】」
「もう生きるのが嫌になったんだよ!」
「だからって自殺する?それは【本当に窮地に立った人間がすることだ!お前はまだ腐っちゃいないだろう!!】」
「うるさい!もういい!帰る!!チャックス行くぞ!!」
そう言い捨て俺は喫茶店を出ようとした。
出る途中にツウルが叫んだ。
「俺はチャックスを引き取ることより【お前に死なれる方が迷惑なんだよ!!】」
喫茶店を出た。
外は相変わらずの陽射し。
「シン・・・。本当に死ぬつもりチャオか?」
「・・・あぁ。」
「チャックスはそんなことしちゃだめだと思うチャオよ。」
「お前も言うのか・・・。」
「今までお世話になった人たちに申し訳ないチャオ。」
「・・・ずいぶん人間味のある事言うなお前・・・。」
少しの沈黙。
そしてチャックスが口を開いた。
「・・・【それでもシンが死ぬつもりなら・・・チャックスも一緒に逝くチャオ。】」
「え?」
「シンが死んだら、チャックスの居場所はなくなっちゃうチャオ。
だったらチャックスもシンと一緒に死んだ方が幸せチャオ。」
「チャックス・・・・すまない・・・。」
目に涙がたまった。
チャックスには見えないように上を見ながら泣いた。
家に着いた。
台所に行き包丁を握り締める。
ふと、さっきの喫茶店でツウルの言った言葉を思い出した。
包丁を持った手が震える。
とめようと思っても止まらない涙があふれて手にこぼれる。。
「・・・だめだ・・俺はこんなところで死ねない・・・。」
手に持った包丁がするりと抜け落ち床に刺さった。
死ぬのが怖かった訳ではない。
ただ【どんなに生活が苦しくても俺のことをちゃんと思ってくれている人がいる】
そう思うと死ねなかった。
「それでいいチャオ。こんなところで死んだら馬鹿見たいチャオ!」
「そうだな・・・。」
プルルルルル・・・・
電話が鳴った、涙で声がかれるかもしれないけど電話に出た。
「コラー!シン!何時になったら仕事にくるんだ!!」
「あ・・・すいません!今すぐ行きます!」
俺は涙をぬぐって玄関へと向かった。
「チャックス留守番頼む!」
「わかったチャオ!」
そして俺は急ぎ足で玄関を出た。
- 完 -
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「アニマ」【an・i・ma】--- 霊魂・魂・命 などの意味