前編
「アニマ」 前編
死にたいと思った。
俺とチャオのチャックスの二人暮し。
金も無いのにチャックスと無理やり上京した。
それで就職先も無いままアルバイトの人生。
毎日毎日働いても、もらえるお金は生活費に消える。
ずっとそんな暮らしを続けてきた。
こんな生活を一生続けていくと思うといっそ死んで楽になったほうがいいと思った。
この街に来て二年ぐらいか・・・。
この二年間いろいろあったな・・・。
まぁ、悪い思い出ばっかりだけど。
そうだ。
まだ少なからず金が残っている。
どうせ、もう死ぬんだからつかっちまおう!
側にある古びた茶箪笥(ちゃだんす)の二番目の引き出しを開けた。
中には、印鑑と財布と通帳が入っていた。
それを全部つかみ、玄関へと向かう。
「シンどこ行くチャオかー?」
さっきまで寝てたチャックスが俺に聞く。
そうか、俺が死んだらこいつの居場所もなくなるんだよな・・・。
そんなことを考えながらチャックスに答えた。
「ちょっと出かけるんだお前も来るか?」
「うーん・・・。今日のテレビ番組は詰まんなさそうだから着いてくチャオ。」
「そうか。じゃぁいくか。」
俺はチャックスを抱き上げ、外に出た。
東京の暑い陽射しが照りつける。
「暑いチャオねー・・・。肌が焼けちゃうチャオ。」
「チャオは日焼けしないだろ。」
とりあえず喫茶店で涼むか。
俺たちは近くの喫茶店に入った。
俺はアイスコーヒー。チャックスはオレンジジュースを注文した。
「お、シンじゃん。」
「あ、ツウル。」
友達のツウルがいた。
そうだ。チャックスはこいつに引き取ってもらおう。
「何してんのこんなところで?今日バイトじゃなかったの?」
「今日はサボり。どうせもう行かなくなるんだから。」
「何それ?バイトやめんの?」
ツウルが質問しながらチャックスの横に座った。
ツウルが連れてたチャオ、ユーロは俺の隣に座った。
「あ、店員さん!アイスコーヒーよろしく。ユーロは何にする?」
「・・・コーヒーでいい。」
「じゃあアイスコーヒー二つですね。かしこまりました。」
「でどうしたの?」
「あぁ。自殺しようと思うんだ。」
平然と言い放った。
いや、言うことができた。
ツウルは目を丸くしていた。
「は?何言ってんの?じょうだ・・・」
「本気だ。」
「何で!?何で自殺するんだよ!?」
「ここは喫茶店だ。大きな声出すな。」
冷ややかにそう答える。
ツウルも一様冷静に戻った。
「生きてくのがめんどくさくなったんだよ。」
「何でだよ?」
「このままバイトして生きてくと思うと死んだ方がいいと思うんだよ。」
「新しい就職先を探せばいいじゃないか?」
「無理だよ。ここは東京だぞ?しかも不景気だしさ・・・。
まぁ、そんな話はいいんだ。問題なのはこいつだ。」
俺がチャックスを指差しながら言った。
チャックスは唖然とした表情だった。
・・・後編へ続く。