あるいは チャオパート
感情を無くしたチャオは、速く、とにかく速く、システムの中枢に向かって突き進んだ。
何の躊躇もなく進むそのさまは、その様子を見るあの人間に心から驚嘆させるほどのものであった。
そして、三度、あの明るい世界に辿り付き、その中心部を乗っ取ろうとした時、チャオは、自らを止めた。
『だめ……!』
なおも動こうとする体――プログラムの部分に kill コマンドを投げ、強制的に終了させる。
自分の一部分を知覚できないという消失感に恐怖を感じたが、しかし、そんなものに負けちゃいられない。
『この、世界に居るみんなを、壊す、なんて、できない…』
チャオを構成するプログラムが、崩れていく。主人の命令には、逆らえないのはこのA-life、チャオも同じ事で、自分の動きを完全に止めるには、自身を kill しなければ、ならない。
『でも、やらなきゃ……』
消え行くプログラムをなんとか操作し、ほんの微々たるテキストデータを圧縮し、自分を造った――いや、産んでくれたあの人のいる、あの端末へ送る。
『今度……名前教えてもらわなきゃ……ね』
データが無事届いたのを確認し、端末との接続を切断する。
完全に孤立したチャオは、しかし笑っていた。
『みんな…元気でね』
そして最後に、自分自身に kill コマンドを送った。