小説事務所 「開かずの心で笑う君」
     ――空が眩しい。
 そのせいか、今の時間がわからない。
 太陽の光が眩しいのは明らかだが、対する空の色――用意されたステージは、月の為のものだ。でも、月はこんなに眩しかったっけ。
 その光は、今目の前にいる彼女の笑顔と一緒に笑う。
「お兄ちゃん」
 眩しい笑顔だ。
 怖い。
 怖い。
 怖い。
「お兄ちゃん」
 その笑顔はいったいなんだ?
 太陽の笑顔か?
 三日月の笑顔か?
 その優し過ぎるまでの声はなんだ?
 天使のささやきなのか?
 悪魔のささやきなのか?
「お兄ちゃん」
 やめてくれ。
 そんな顔で。
 そんな声で。
 笑わないでくれ。
 右手が僕の手を握ろうと伸ばされる。
 左手が僕の命を奪おうと伸ばされる。
「お兄ちゃん」
 お願いだ。
 誰か、この悪夢から僕を助けてくれ。
