(2)
「『天才だ…!』天才が見えるぞ…!」オモチャオを指差しながら言った少年に、
「『何か見えるだぁ?俺には何もかも見えねぇ。あ、お前こ?』」携帯電話で通話している
少年が、返答しました。
冷え切ってしまったチャオは、笑いあう人々を見て、思いました。
「(みんな、一緒なんだな…)」
彼の名前はニウス。野良チャオが嫌いだったチャオです。
本当の意味で天才の彼は、自分より劣ったチャオを信じられませんでしたし、存在価値すら無いと思ってきました。
しかし、今朝のことです。
「なあ、何でそんな暗い表情をしているんだ?」
一人の、小さなチャオたちをたくさん連れた青年が、尋ねてきました。
「当然だ…!僕は捨てられたんだ!こんな野良チャオどもと…。」
「なら、俺たちと一緒に遊ぼう。みんなで。」
青年の笑顔と、そのたくさんのチャオたちを見ているうちに、苦痛は消えて行きました。
彼は飾りがいっそう綺麗な町並みを、清清しい気分で見上げます。
「『見事だ、見事なポヨだ…!』」元々、良い暮らしをしていたニウスに、怪しい博士が近付いて来ましたが、
「何やってんだよ!さっさと帰るぞ!」別の少年に止められまた。
ツリーの傍で、みんな一緒に歌を歌いながら、幸せそうにしている一角。
「~♪」
彼の育てたチャオたちは、彼が牢獄に捕らえられている間も、成長していました。
「すごいじゃないか、みんな。よく練習したね。」
「えへへー、褒められちゃったチャオー。」
クリスマスを楽しみにしていたチャオは、夕焼けに降ってきた、小さな粒を見上げます。
雪でした。
「わぁ!雪チャオ!」
ホテルの支配人は、かつての罪人と顔を見合わせ、苦笑しました。
二日ほど早い、クリスマス。
「メリークリスマス!チャオ~!」
「わーい!」
「サンタさんが持ってきてくれたチャオ!」
普通なら降らないはずの室内で、雪がちらほらと降っています。
常時開放している、入り口から差す夕焼けが、やけに綺麗です。
「本当にやるとは、思ってもみなかったよ。」
「支配人?誰がやったんですか?」
どこかで、飛び回っているオモチャオが、大きなくしゃみをしました。
自らの願いを叶えるためにやって来たペアは、自分の仕事が終わったとばかりに歩いています。
「案外、簡単だったチャオ。」
1年ぶりのステーションスクエアは、1年経っても全く変わっていませんでした。
願い、それ自体は叶えられませんでしたが。
「やっぱ、1年の修行じゃ、物足りないチャオね。」
そういうと、飼い主の人は頷きました。
大きめのバイクにまたがり、そのバイクに銘されたマークに、自然と目が行きます。
そう、聖誕祭記念バイクレース準優勝のシールです。
バイクのエンジンをかけ、彼らは走り出しました。自分達の、目的のために。
「みんな、何か裏があって、こんなにはしゃいでるんじゃないか?」
とある人物の疑問に、その長年の相棒である、こちらに来てまだ若いチャオが、言います。
「『それはない。何故なら奴はチャオだから』」
見よう見真似の言動に、二人して大笑いしました。
ゆっくり…街路を歩いてきた少年が、まるで漫才師のように、みんなに言いまわります。
「みなさん!『あけましておめでとう』!」
「違うだろ。」
夕焼けも沈み、一層深みを増した空に、満天の星が輝きます。
中央に位置する、聖誕祭記念の時計台の、長針が、ゼロを。短針がロクを差し、
たくさんの笑顔と一緒に、ステーションスクエアの時間は進んでゆきます。