(1)
ここはステーションスクエア。
修復されて来た街では笑いが絶えません。
ついさっきも、そこで一匹のチャオが叫びながら快走していたところです。
そして、ステーションスクエア、12月の大祭、聖誕祭の始まりです。
未だ昼間と言うものの、街路は様々な色で採られています。
これから、聖誕祭開催の凱旋パレードが開催される予定です。
12月23日、明日はクリスマスイヴという、まるで誰かが仕組んだような行事の立て続け。
みんなは、躍らせていた胸を、更に躍らせます。
そう、ここにはもはや、年齢性別種族のわだかまりは無く、一つの聖誕祭を祝う〝人〟たち、
という、集団なのです。
「独りきりの聖誕祭かぁ…。」
準備の段階から、かなり張り切っていた青年が、微笑みながら呟きました。
「独り、ってのも、悪くないかな…。」
飾り付けを終えた、あの時の達成感。
ボランティアの人達、みんなで楽しんだ、聖誕祭前夜。
誰もかれもが楽しそうに、笑っていた事を、青年は思い出しました。
今日は誕生日。しかし、青年には聖誕祭という日が誕生日であると同時に、集中してしまう、とある理由がある事を知る人は、いません。
と、そこへ。
「お兄ちゃん、お誕生日なんでしょー?」
「ん?―ああ、そうだよ。」
「いいなぁ、ぼくも聖誕祭と同じ誕生日が良かったなぁ。」
「あはは。でも、キミの誕生日も、聖誕祭だと思うよ。」
青年は微笑みます。
青年が聖誕祭に集中する理由を知る人は、やっぱり誰もいませんでした。
『只今の時刻をお知らせします。』―時刻は正午を回り、凱旋パレードが始まりました。
多種類のイベントを詰め込んだような家内の一部屋、集団もまた、笑っていました。
「さて、諸君、いよいよ待ちに待った聖誕祭だ。」
えへんと偉そうに仕切ると、辺りは静まり返りました。
チャオ、人間、中には変な怪獣までいます。もちろん着ぐるみす。
そして、会長は叫びました。
「これから我らが集まりは、規模の小さいものではなくなる!全宇宙、全世界、全ステーションスクエアを我らの渦に巻き込むだ!」
「会長!やっぱり後になるほど規模が小さくなってます!」
「しかも家の周りに白と黒の車がいっぱい止まっています!」
彼らの活動は、少々度が過ぎたらしく、通報があった模様です。
彼らの計画は無残にもここで絶えるのか、もしくはどうなるのか、全ては赤いサイレンが知っています。
『全てのチャオラーに告ぐ!総攻撃を開始せよ!』―警察が叫ぶと、笑いながら家の中へと突進を敢行しました。
冒頭の青年と同じく、独りでいる男性も、今や脱獄の重みを忘れていました。
神聖な明るい空間、緑の芝生が地面を埋め尽くし、チャオが笑いあう場所で。
「はい―どうしても、やらなければなりませんでした。この子たちの為に。」
老人に、彼の師とも見える白髪の老人に、彼は弁解しています。
チャオたちは彼との、久方ぶりの再会に、心から喜んでいました。
「ふむ。信じよう。」
「本当ですか―」
「この子らが、未だそなたに懐くのが、何よりの証拠。そなたに悪事は働けんな。」
約束通り、聖誕祭をチャオたちと共に過ごす彼の顔にも、
また、みんなと同じ笑顔が、ありました。
彼を探していた警官は、ピタリと動きが止まります。
『チャオガーデンに不審者侵入』しました!―警報が鳴り、彼は一目散に逃げ出します。
一匹―と表現するかどうかに困るオモチャオが、凱旋パレードの車を猛速で追っています。
「うおおぉぉぉぉぉぉ!!」
かいろ君は、凱旋パレードの上にいる、白雪姫の仮装をした女性を追っているのでした。
しかし、その隣に居る男性を見て、かいろ君は、叫びます。
「『お前何してんのぉぉぉ!!?』」
驚いて跳ねる男性の、周囲に居るボディガードが、叫びます。
「『何事だ!』」
ステーションスクエアの人気者は、人々の為に気合で働く事も忘れて、走り続けています。
「お前、プレゼントを渡すのは俺の仕事だあああ!」
なるほど。道理でかいろ君、サンタさんの格好をしている訳です。
やっとこさ、気合で体温を温かくしたと思えば、再び動作し始めたらしいのでした。
そこで、男性からのプレゼントを、台本通りに受け取った女性は、言います。
「『サンタさんはね、夢を与えてるの。それだけでいいでょ?』」
衝撃を受けたかいろ君の快走は、次第に失速し、地面にへたり込みました。
「そ、そういう事だったのかぁぁあ…。」
彼は、人々の夢を与えるべく、再び飛び回ります。叫びながら…。
(2)へ。