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本当のところ、僕は彼から認めてもらいたかったんだと思う。
今までこのチャオBという空間で僕が身につけてきた知識を、技能を、そして、僕がこのBBSに、何を貢献してきたかということを。
しかしながら、その貢献は結局のところ、彼には何ら関係のない世界での出来事なのだ。
僕はこのチャオ世界での出来事がどうすれば理解してもらえるのか分からない。
彼だけじゃない。
僕の周りに生きるほとんどの人は、このチャオ世界に触れることなく一生を過ごしてしまう。

彼なら理解してくれると思っていた。でも、チャオを忘れてしまった彼にとって、こんな世界の存在を知り、そこでどのような富が動いているかなんて、そもそも関心になかったんだ。
僕は彼に、自分がチャオ世界に置いてきた作品を、自慢できない。
一方の彼は社会的にみんなから理解を得るような道を選んで、そうして実力を僕に見せつける。
悔しいんじゃない。悲しいんだ。
自分で言うのもなんだが、僕ら二人は、どちらも頑張ってきたと思うよ。
でもその力が別々の方向を向いている限り、もう昔のような、新しいミラクルが生み出せるようにはならないんだろう。
それがとても悲しい。

僕は彼の背中を追いかけたいとは思わない。
ここ数年間、社会のルールにへそを曲げて生きてきた自分に、今更そんな道が似合うとも思えない。
ただ、僕には自信を持って言えることが一つある。
彼の存在も、チャオの存在も、僕にとっては同じ世界だ。

僕が彼と出会ったことは、今でも僕の胸の中で光り輝く思い出だ。
僕がチャオと出会ったことは、そこで身につけた知識や技能は、いつまでも深い体の奥底で眠る。
僕は決して、この二つを無駄にはしない。
だから僕は言う。ありがとう、と。
それは別れの挨拶である。もう彼らは僕の生きる道しるべ、羅針盤ではないのだ。
でも、僕は彼らをいつまでも思い続けながら、生きていける。
道がなくても進んでいける事を示してくれたのは、彼らだったのだから。

僕のハンドルネームには今でも、君と僕の、二匹のチャオ達の間に生まれたあの子の名前が使われている。
だから、必ず。

このページについて
掲載号
チャオ生誕10周年記念特別号
ページ番号
5 / 5
この作品について
タイトル
2メートル50センチ
作者
チャピル
初回掲載
チャオ生誕10周年記念特別号