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僕はため息をつく。
まさか旧友との再会がこんなにも疲れるものだなんて、思いもよらなかった。
昔は何の隔たりもなかった二人が、今ではこんなに気を使ってしまうのはなぜだろう。
それがつまり、仲違いというものなのか?
いや、しかし彼は僕にとっていつまでも親友で、彼にとって僕もいつまでも親友だと、そう思う。でなければ、いくら誕生日が近いからといって、プレゼント交換のためにわざわざ時間を割いて再会しようなどということにはならなかったはずだ。
……それだけが親友として、本当にするべきことなのだろうか。
僕には分からない。僕が何をすればいいのか。
再会前に感じていた不安の二割は喜びへと昇華した。でも、残りの八割はこの、ぐるぐると渦巻く、何とも言えない心の重荷として僕にのしかかっている。
何だろうこの気持ちっ!……なんて、ナックルズのような台詞を言ったところで、彼には分からないんだろうな……
彼がソニックXを見ていたという話を、僕は聞いたことがない。
そう、彼はもうチャオを育てていないし、ゲームもほとんどしないし、だから僕と彼の価値観は、あの時から大きく変わってしまった。
毎日のようにソニアドを共に攻略し、毎日のようにチャオの育成状況を報告し合ったあの日には、もう戻れない。
小学校を卒業すると、自動的に僕らは同じ地区の中学校へと進学できる。
だから僕は当然のように、彼と同じ中学校に行くものだと思っていた。学校がどうなろうと、放課後、彼と遊び続ける生活は変わらないものだと、思っていたのに。
中学校から本格的に勉強を開始するというのは、彼の両親の方針だったらしい。
彼は近所に一つだけある、国立大の付属中学の受験を決めていた。そしていつの間にかそこに受かって、彼の生活は、途端に忙しくなっていった。
時々彼の自宅まで遊びに行ってみると、話は出来るものの、一緒にスポーツやゲームをするような時間はなくなった。
それでも何度も彼と遊ぼうとしたのだが……いつからか、次第に僕も諦めに気づき始めた。
一応連絡を取り合っていたので、友人としての関係は維持できていた。けれど、それが僕には不満だった。
僕は小学校のときのような関係を望んでいたんだ。
端から見れば、それは幼稚な望みのように思われるかもしれない。
でも、遊びの時間というのが当時の僕にとっては、とても重要だったんだ。
二メートル五十センチという言葉が、僕の頭の中に浮かんできたのは、いつのことだろう。
もし、写真家が僕ら二人の距離感を表現する写真を撮るとしたら、写真家は僕と彼とを、二メートル五十センチ離して立たせて、それを撮る。
なぜならそれが、僕ら二人の距離感だからだ。
近いとも遠いとも言えない。
この距離を縮めるために、僕が必要とするのは時間である。それは分かっている。
でもその時間は、もうない。