雪の日に鍋から
主人公 まんま主人公。ソニアド2でチャオにハマる
太った眼鏡の人 主人公の恐れる唯一の人物。詳細は謎
チャオ ぷにぽよで可愛いゲーム上の生物
薄らと目を開ける
カーテンを閉め忘れていたのか、想像以上の光が僕の目に飛び込んでくる
そろそろ起きよーか…そう思いつつも、僕は布団から出られない
再度睡魔が襲う
引きずり込まれた夢の中に存在する現実の記憶が、僕の思考を指で突いた
…何だ?僕の記憶は昨日見た番組を呼び起こす
クイズ$ミリオネア
そして僕は気づいた!頭脳に電撃が走る
昨日は木曜 今日は金曜!まずい、平日だ!
本能的に体が起きる
水溜まりに落ちた一滴のインクの如く脳にエネルギーが行き渡る
それとほぼ同時に蘇る記憶
今日…祝日…天皇誕生日ではないか…
ミリオネアで起きてしまった自分があほらしくなる
しかし布団に戻ることさえ億劫なので、仕方なく体を起こす事にした
辺りを見回せば案の定、カーテンを閉め忘れている
ただ、今日は普段と違うことが一つあった
妙に眩しい
よく見ると、外は一面の銀世界
昨晩から今朝にかけて雪が降ったらしい
ぼんやりの最中にも、インクは広がる
奥底にしまわれていたもう一つの記憶―太めで眼鏡のあの顔が
「明日は12:30分には来てよ」
そうだ…今日某所で会議があるんだった…
脳と体がフルに動き出す
雪を考え、12時30分に着こうと思ったら20分前―12時10分頃に出なければ間に合うまい。
布団脇のデジタル時計は11:38 タイムリミットまで僅かである事を知らせる
制限時間は約30分!寒さに構わず布団を出で服を引ったくり居間兼食堂兼料理場まで飛ぶように進む
昼飯は…饂飩があったはずだ
鍋に水を適当に入れ火にかける
急いで着替えると、びっくりマークを幾つ付けても足りない位の勢いでトイレへ向かう
びっくりマークの下の点の部分が寝ている時の活動量ならば、上の今の部分の長さは地球を2週半するだろう
リビング兼ダイニング兼キッチン…略してLDKに戻り湯を確認
まな板を半分浮かせた状態で野菜を目にも留まらぬ速さで切りまくる
で、そろそろ麺を茹でようかと、鍋に目を走らせたその時だった
鍋の中に、奇妙な栗型の物体が浮いている
いや、少し違った
よく見ればその栗には目、口、それに体には手足も付き、どうみてもQoo…じゃなくてチャオそのものの形をしている
…まさかね
目を擦る。頬を抓る。まだ布団の中なのではないかと両手を振ってみる
「あひゃー!!」僕は腕を振るとき腕をまな板に当ててしまったので、ながしの中に野菜が引っくり返った
兎も角、やはり存在するのは紛れも無くチャオである
しかも…茹ってる
僕は― 僕は心優しいチャオブリーダーの一端である故、優しくチャオを助けてやるのが任務。
赤みを帯びたチャオの体は、予想以上に熱かった
鍋から出したら冷やさないと
生憎今は冬だし家には便利な冷房器具は存在しないので、冷凍庫を開きっぱなしにして、その傍にチャオを置いてみる事にした
その間にも僕の手は動き出す
饂飩を鍋に放り込んで野菜をながしの中から救出、つゆの準備を進め箸を調達し…
と、慌しく饂飩作りを進めるうちにどうやらチャオは気が付いたらしい
立ち上がると、きょろきょろ辺りを見回し、冷凍庫が開きっぱなしなのを見ると慌ててぶるぶる震えだす(反応遅っ
そうしてしばらくきょろきょろした後、僕の手の内にある饂飩の麺を見つけて急ににっこりし、接近してきた
わわわ何だ何だ
饂飩が狙いか!?まだ茹でてもないのに
取られまいと素早く饂飩をなべに投げ入れると、今度はそっちに気を引かれたのか
鍋への襲撃を開始するので、慌ててチャオを持ち上げて動けなくしてやった
それでもチャオが手の内でじたばたするので、仕方なく、蜜柑を与えることに
某チャオ小説上の設定の「酸味のある果物がすき」というものからの思いつきである
チャオは蜜柑を受け取ると皮を剥こうと―するが上手く剥けず、皮ごと食べだした
そこまでするとは。何でこんなに腹が減ってんだ、こいつは?
僕はこやつを"とんでもなく危ないチャオだと思った"
チャオが蜜柑を食べている間に野菜&つゆ投入、蓋をする
余りに急いでいた為今まであまり考えなかったが、何で家にチャオがいるんだろう?
チャオはゲーム中の創造キャラクター、いわゆるUMAである。(違うか?)
確か鍋の中に出現したんだよな…
思い起こしている間にふとチャオの様子を見ると、チャオが蜜柑の段ボール箱によじ登り
新たなる蜜柑の入手に総力を発揮している最中だったのであわてて引き離す
それで思考が中断されてしまった
気がつけば既に饂飩は茹で上がっているようだ
丼上で鍋を反転させ、饂飩をどばどばと投入する
汁がびちゃびちゃと跳ね、その内の一つが僕の手を襲った
あちっ
それで目が覚めた
あれ、今のは夢?…そうか?
やたらリアルな夢だったなあと思いつつ目を擦り窓を見やると、そこには夢の中と同じ銀世界が広がっていた
その直後、饂飩の汁の熱さより恐ろしいことに僕は気づいてしまった
布団脇の時計、その液晶の12:19の文字の意味を理解したのである。
あわてて着替えて外に飛び出す!
しかしそこに雪があるわけで、急いで自転車なんか使うもんだから例によってスリップ転倒。
その先のかまくらに突っ込み、びしょぬれで会議に向かったことなんていかにも聖誕祭の思い出となったろう。