ゆきのあさ

戸を開けると強い北風が、今までストーブで暖められていた僕の体をこごえさせる。
同時に雪がなだれ込み、僕はその猛威から逃れるように、その戸を閉めた。
急いで傘を広げると、それを縦のように体の前に突き出し、外の寒々しい世界へ向けて進む。
先ほどからの雪と風は、僕の進行をせばむかのように舞い踊り続ける。
昨日から降り続けた雪も今朝はやんでいたのだが、再び戻ってきたようだ。
本来なら、学校まで行くのは自転車を使う。
ただし、今日は別。こんなに雪でもこもこした地面を自転車で走ればどうなるか、目に見えている。
そういうわけで今日は、この住宅地からちょっと離れたバス停まで行き、そこからバスに乗ってゆく予定である。
バス停まで行くには二つの道があり、
ひとつは広い公道
もうひとつは細い谷間の山道。
今回は後者を通る。
公道のほうが雪も整備されており幾分通りやすいのだが、何しろ車のとおりが比較的多く、しっかり固められた地面は滑りやすい。
そして何より、山道が圧倒的に近道。
吹雪の中を猛突進している僕。
神様は人類を平等にしたかもしれないが、こんな平等はいやだ。
行く先まもなく、先ほど説明した山道への入り口が見えてくる。
普段余り人の通らないそこには、一人分の足跡―おそらく昨日のもの―しか残されていない。
階段になっているはずの坂道には、のっぺりと雪が広がっているだけである。
僕はそこをながぐつでずかずかと突き進む。
いちおう坂道が終わったところで、僕は雪の上に落ちたテニスボールを目にする。
雪が積もった後においたようだから、元気のいい人もいるものだと感心する。
神様は人類を平等にしたかもしれないが、やっぱりぜんぜん違う人もいるもんだな・・・
次の瞬間!テニスボールがいきなり渦巻状の物体に変化した。
「うわ!」
ぶったまげる僕。びっくりしたぁー。
もう一度よく見てみると、その渦巻きの下に、生物の存在を認識する。
水滴みたいな頭、丸っこい手足。紛れもない。某ゲームのチャオだ。
うそでしょ・・・・・
昨日寝たのは8時だったからな、もしかして寝すぎたのかも。
ほっぺたをつねる。ごっつい痛い。
あいにく、僕はストレスというストレスを寄せ付けない、超楽天思考人間なので、幻覚なんて見ないと思う。
チャオに出会ったのは去年の9月。
その当時、僕は受験を控えていたのだから、こんなときにチャオにハマってしまっていたのは、今から考えるとかなりヤバイ。
これで僕が楽天思考だという証明、終わり。
「うそでしょ・・・・・」声に出してつぶやく。
まさかとは思いながらも、チャオに近づき、チャオの頭をぽりぽりなでてみる。
ポン!とポヨがハートマークになり、チャオはうっとりした表情になる。
それを見た僕もうっとり(*^_^*)
・・・・・・・・・・
って、こんなところで道草食ってちゃ、いかん、いかん。
ちょっと名残惜しいのだが、チャオを背にバス停への旅路を続ける。
数メートル先に、またもや黄色いボールを見つけてしまった。
それを見つけた際、ちょっと後ろを振り向いたので気がついた。
チャオがすりよってきてらあ。
こうされると動こうにも動けない。
仕方がないので、さっき見つけたボールを手に取り、後ろに向かって投げる。
好奇心旺盛なチャオは、その球にすぐに気がつくと、走って追っかける。
その球を拾ったチャオは、またもやポヨをハートにすると、そのボールを自分の頭の上のテニスボールと取り替える。
あ、そか、あれは本物のテニスボールだったのね。
チャオがバイバイと手を振ってくれる。
僕もついうれしくなりうっとり(*^_^*)
・・・・・・・・・・
って、こんなところで道草食ってちゃ、いかん、いかん。
僕は我に帰ると、一目散に山道を駆け抜ける。
山道は公道につながっている。
赤いバスの肩が僕に時間のないことを知らせる。
ここまできたら、あとはバス停までダッシュ!!
そのとき僕は忘れていた。
公道の道は、固められており滑りやすいことを・・・・
あんのじょう、どうなったかはご想像に任せよう。
人生チャオありゃ苦もあるさあ~
本当に人類は平等なのだろうか・・・・・

おわり

この作品について
タイトル
ゆきのあさ
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第151号