春 「生まれ」

 今日から家族だぞ

 そう言って僕を買ったのは優しそうな夫婦だった。
 夫婦は僕を一流のアスリートに育てると意気込んで、たくさんのカオスドライブを持ってきた。中でも緑色のカオスドライブが多くて、それでも何とか、毎日全部飲み干していた。

 家族は家族のために

 それが「この家」の家訓だ。
 カオスドライブはいっぱい飲んでいたけれど、僕の成績の伸びは良くなかった。もう走りたくない。そう感じていた。
 しかし僕も家族の一員である以上は、家族の役に立たなければならない。
 役に立たなければならないのだ。
 

 僕が一歳になるころ、進化の兆しが見られるようになった。体が黒く変色し始めたのだ。そのようすを見た夫婦は、

 ダークチャオになるのは怠けている証拠だ
 家族でありたければ、努力しろ

 と言って、またたくさんのカオスドライブを持ってきた。
 ダークチャオになることはできない。だから僕はヒーローチャオになった。
 その頃から少しずつ、僕の成績は伸び始めた。

このページについて
掲載日
2015年12月23日
ページ番号
1 / 5
この作品について
タイトル
うそつきのチャオ
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
2015年12月23日