「月のない夜は」

ステーションスクエアに夜が来る。
ミスティックルーインにも夜が来る。
いつもなら、太陽に代わって明るい月が照らしてくれるのだが、今日はその月の姿はなかった。


     特別読みきり小説・~月のない夜は~


大体、月が見えない夜なんて、天気が悪いか、新月か、エッグマンが暴れたかのどれかしかありえない。

今日は晴れているし、エッグマンが騒ぎを起こしたなんて新聞には載ってない。
そう、今日は、新月。
それも、「特別な夜」なのだ。

なぜ「特別」なのかって?
それは、この後でゆっくり。


それはともかく、毎夜毎夜、月に願いをかけているチャオがいた。
願いといっても、他愛も無い事で、
「明日は晴れますように」とか、「明日はおいしい物が食べれますように」とか、ささやかな願いだ。

でも、なんで新月になるのか、このチャオは知らない。
1ヶ月に1度、晴れているのに月が消える夜は、願いをかけずに眠ることにしている。

だけどこの夜だけは、いくら布団に入っても眠れないのだ。
別に昼寝してる訳じゃないのに。


そこでこのチャオは、外に出て、空を見上げた。
すると、綺麗な空。
今まで月明かりで見えなかったちょっと暗い星たちも、今日はよく見えた。

「へぇ、星ってこんなにあるんだ―――――」
そう思った。
それと同時に、
「そういえば、星に願いをかけるってのもあったっけ」
というのも思い出した。

そこで、ある願いをかけてみた。
半信半疑ではあったが。

「・・・明日は、月が見えますように」

よくよく考えれば、新月は1日しかないのだから、見れるはずなのだが。
でも、まんまるな月が見たいと、思った。

その夜は、とてもよく眠れた。


翌朝。

いつものように朝起きて、散歩に出てみた。
と、その時。

ふと太陽を見上げると、太陽が欠けていたのだ。

「!?」

そのチャオは恐れた。
このまま、太陽がなくなって、永遠に夜になってしまうのではないか。


その時、すぐ横で、親子の会話が聞こえた。

「お父さーん、太陽が欠けてるよ!!大変だよ!!」
「ああ、あれは「日食」っていって、太陽と地球の間に月が入って、太陽を隠してしまうんだ。
 だいじょうぶ、また元通りの太陽になるよ。」


チャオは思った。
「あれが、月・・・」

そして周りはみるみる暗くなり、そしてついに、月が太陽を覆い隠した。

「まんまるな、月・・・」

月の周りからは、太陽から漏れた光が見える。

「きれいだ・・・」

ただ、その月に隠れた太陽を見ているだけであった。


やがて太陽が再び現れ、周りを明るく照らす。

その光が、とても眩しかった。


その夜。
まだ、月は見えない。

でも、月のない夜は、星に願い事をかけることに決めた。

「明日は晴れますように」

いつもの願いごとであった。

この作品について
タイトル
特別読みきり・「月のない夜は」
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第88号