特別読みきり  ~「伝説」~

未来の話。
具体的にいつなのかは読者様次第。

チャオは世界を席巻した。
言うなれば、かつての「ポケ○ン」の如く。

チャオBは何処までも更新されていく。
現在(=2002年)、つまりチャオが有名になる前のチャオBなんかは「伝説」として語られていた。

そんなある時、ビッグニュースが報じられた。

「○○座α星系に生命体発見」

簡単に言えば、地球以外の星で生命体が見つかった、という話。

その後の探査機による調査の結果、それが非常にチャオに似ている生命体だと判明。

ところが、それは悲劇の始まりだった―――――


調査は続き、「それ」は知的生命体ではないことが判明する。
これが知られた時に、一部で当然の如く過激論が現れた。
「この星を占領して、将来的には環境が悪化する地球から人類をここに避難させよう」

地球では議論の嵐。

そんな中、その次の調査結果が入ってきた。

「この星は、既に他の知的生命体により占領されている――――」
先客がいた訳だ。

それを最後に、通信は途絶えた。
恐らくは、侵入者とみなされて、「先客」により破壊されたのであろう。

しかしそれでも、一部の過激論者は恐れなかった。

独自に最新鋭の武装を積み込み、その星を侵略しに向かったのである。
かくして、チャオの星のすぐそばで激しい戦争が繰り広げられた。

侵略しに向かった過激論者の中に、チャオBのメンバーがいた。
彼は、「実際にチャオを見たい!」と、過激論に乗じてチャオの星へ向かったのである。

戦闘の最中、彼とその部隊はその星へ着陸することに成功した。
もちろん、敵の激しい砲撃をかいくぐり、である。

敵の基地に潜入し機密文書を奪取する、という表向きの目的を終えた後、彼はチャオの住む草原へ向かった。
そこで、彼はチャオの生態を目にした。

「チャオ」は平穏に暮らしていた。
隣で戦争をやっているというのに。
双方の攻撃で死んだチャオも少なくないというのに。
何事もないかのように。

「チャオ」は知的生命体ではない。
その事を考えれば、至極当然の話なのだが、彼は驚いた。

彼の側にいた1匹のチャオを抱き上げた。
そのチャオが笑顔になった。
やはり地球で想像されたチャオとは違うのだろう、ハートマークにはならなかったが。


その時、チャオBの「伝説」が彼の頭をよぎった。

チャオが生まれたのが1998年。
それから数年は不遇の時代が続いた。
その中で数々の「伝説」は生まれた。

今では人気雑誌となった「週刊チャオ」草創期の伝説。
今では常識となった「ライカ育成法」についての伝説。
そしてマイナーであったその時代にチャオを愛し続けた人達の伝説。

それが本当の出来事なのかは分からない。
しかし、それを思い出す中で彼は思った。

「こうまでしてチャオを見に行くべきだったのか・・・?」

そう思うと、彼は抱いていたチャオをそっと地面に置き、再び戦場に戻った。


彼の奮戦にも関わらず、地球陣営は敗北した。

さらに、逃亡するところをつけられ、敵軍が地球に侵略してきたのだ。

過激派がどうだの、と言っている場合ではない。
地球は1つになった。
「この星を、守りぬけ―――――」


彼がチャオの星で入手した情報に、こんな内容があった。

敵軍がチャオの星を侵略した理由は、彼らの生まれ故郷の星が環境悪化で滅びてしまったからだった。
彼らは銀河中に散らばり、生命体の住める星はことごとく侵略していたのである。


これを知った地球の人々。

そして、いよいよ敵軍が地上に上陸、大規模な地上戦へと突入。
地球の人々は、こう叫びながら突撃したという・・・・。


「生くるべき者を生かせよ!
 滅ぶべき者は滅びよ!」


                完

この作品について
タイトル
特別読みきり  ~「伝説」~
作者
ホップスター
初回掲載
週刊チャオ第38号