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お父さんが言ったんだ。
「チャオに会いにいこう」って。
私、なんのことだか分からなかった。
チャオってなんだ?って思った。

お父さんが教えてくれた。
「チャオはね、とっても可愛くて美しい生き物だよ」って。
それでも、私は分からなかった。
今になっては、それが信じられないけど。

そして、私達は出かけた。
寒い冬の夜だった。月が綺麗だったよ。
お父さんが言ってた。
「チャオに会うには、静かにしてなきゃいけないよ」って。
だから、私、静かにしてた。一言も喋らなかった。

・・・怖かった。
私、怖かった。
真っ黒い冬の空に、月の光が差し込んで。不気味だったんだ。
だから、私ね、お父さんにくっついて歩いてた。
私達は、どんどん峠の山へ登っていく・・・。

お父さんは大きく叫んだ。
なんていってるのか、分からなかった。
きっとチャオっていうのを、呼んでいるんだ。
でも、返事はかえってこなかった。
お父さん、がっかりしてた。
だから、私もがっかりした。

朝が近づいてきたよ。
だんだん明るくなってきたもん。
途中に狐も梟もいたよ。
吐く息がミルクよりも白かったよ。
勿論、地べたの雪もね。

広い所に出てきたよ。
お父さんは立ち止まった。
だから私も立ち止まった。
そして、お父さんは、叫んだ。
またチャオっていうのを呼んでいるんだ。

・・・返事が返ってきた。
お父さん、ニッコリしてた。
私も負けずにニッコリしたよ。
「チャオ~!!!!」
水色の、ぽよぽよが飛んでくる。
私、びっくりした。
いつもなら泣いちゃうけど、今日は泣かなかった。

水色のぽよぽよは、私に飛び掛ってきた。
びっくりしたけど、とっても、とっても可愛かった。
犬より猫より、可愛かった。
チャオの、頭のまるが、ハートになった。

「お家につれて帰るかい?」
お父さんが言ったよ。
私はうなずいた。うん!って。
こんな可愛い生き物がかえるなんて、嬉しくていっぱいだったよ。

私達は家に帰った。
もう喋ってもいいのに、なんだがどきどきして、喋らなかったよ。
チャオの声だけが聞こえてきた。

月日は流れて、そのチャオは死んでしまったけど、
私はあの時の感動、嬉しさを忘れない。
有難う。チャオ。楽しい思い出を有難う。
そのチャオが天国でずっと見守っていてくれる事を信じて・・・。

この作品について
タイトル
特別読みきり 【出会い】
作者
竹(N_U2,サイコ)
初回掲載
週刊チャオ第38号