テレビ
ある日チャオガーデンで、僕のチャオがテレビを見ていた。
「チャノスケ。何をしているんだい?」
「テレビを見ているチャオよ」
「面白い?」
「面白いチャオ~!あっ、ネズミさん捕まっちゃうチャオ~!……キャハハハ!」
テレビには、青いネズミと大きくてサングラスをかけたネコが追いかけっこしている様子が映っていた。
壁際に追い詰められたネズミが、追いかけてきたネコを高いジャンプでかわすとネコは壁にドカンと激突してしまった。それをみて、チャノスケは大笑いしていた。
ある日チャオガーデンで、僕のチャオがテレビを見ていた。
「チャタロー。何をしているんだい?」
「テレビを見ているチャオよ」
「面白い?」
「しっ!今いいところなんだチャオ……」
テレビには、夕日をバックに迫真の演技をする男優と女優の姿が映っていた。
「僕はどうしても行かなければならない…。止めないでくれ、セガ子さん」と男優が言うと、
「…わかったわ。…あたし、いつまでも貴方を待っているから…!」と女優が言った。
「…セガ子さん…!」と男優が呟くと、二人は静かに抱き合った。
それを見て、チャタローはうっすら目に涙を浮かべていた。
ある日チャオガーデンで、僕のチャオがテレビを見ていた。
「チャメハメハ。何をしているんだい?」
「テレビを見ているチャオよ」
「面白い?」
「面白いって言うか…不思議な感じチャオ~」
テレビには、ザーザーと耳障りな音を立てながら、砂嵐が延々と流されていた。
「…何も映ってないじゃない」
「確かに何も映ってないように見えるチャオ。でもしばらく眺め続けると…。ほら、何かの形に見えてこないチャオか?」
「…さぁ、わからないよ」
「ウサギさんチャオ!」
「…はぁ?」
「ホラ、真ん中でウサギさんがお餅をついているように見えないチャオか?」
「見えないよ…」
「目で見るんじゃないチャオ!心の目で見るんだチャオ!」
「う~ん…」
これ以上付き合っていると目がおかしくなりそうなので、僕はその場を後にした。
「修行が足りないチャオ!」
ある日チャオガーデンで、僕のチャオがテレビを見ていた」
「チャルメラチャンコ。何をしているんだい?」
「テレビを見ているチャオよ」
「面白い?」
「最高チャオ!」
テレビには、何も映っていなかった。
「…何も映ってないじゃない」
「そうじゃないチャオ!チャオは、この『テレビ』を見ているチャオ!形は古臭くレトロな感じに仕上げ、カラーリングは赤を基調として派手に仕上げる事によって、この殺伐としたチャオガーデンにおいて圧倒的な存在感を示す事に成功しているチャオ!」
「…は、はぁ…」
「さらに動力にはカオスドライブを使用しているため電源は不要!コンセントが無いからコードにけっつまずく事もないチャオ~!さらにさらに…」
僕は足早に立ち去った。
ある日チャオガーデンで、僕のチャオがテレビを見ていた。
「じゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょのすいぎょうまつうんらいまつふうらいまつくうねるところにすむところやぶらこうじのぶらこうじぱいぽぱいぽのしゅーりんがんしゅーりんがんのぐーりんだいぐーりんだいのぽんぽこぴーのぽんぽこなーのちょうきゅうめいのちょうすけ。何を見ているんだい?」
僕が聞くと、じゅげむ(以下略)はテレビの上を指差した。
「…何も無いじゃない」
「いるチャオよ。テレビの後ろに。白い着物を着た綺麗な女の人が」
「そっか」
僕は祟られないうちにその場を去った。