~転生資格~ ―オマエか―
「――というわけで、貴方は今日亡くなりました。ご愁傷様です」
「はぁ、まだ実感わかないチャオ」
そこは、真っ白な空間です。全く何も無い空間に、ヒーローチャオとダークチャオ、それに、ごちゃごちゃと色々な小動物のパーツをつけたダークチャオがいました。
ごちゃごちゃしたダークチャオの目の前に、ヒーローチャオとダークチャオがプヨプヨと浮かんでいます。
先ほど、死を宣告したのがヒーローチャオで、死んだ実感がないと言ったのは、ごちゃごちゃしたダークチャオです。
「さて、死んだばっかりで悪いが、今からお前の行き先を決めさせてもらう」
そう言ったのは、プヨプヨと浮かぶダークチャオです。
「行き先?」
「そう。つまり、天国へ行くか、地獄へ行くか――転生するかだ」
ごちゃごちゃしたチャオはポヨをハテナマークにします。天国と地獄はわかるけど、転生って?
プヨプヨと浮かぶヒーローチャオが説明してくれました。
「転生とは、生まれ変わるコトです。成長した体やスキルなどをリセットし、また一匹の子供チャオとして生まれ変わります。ただ、今の記憶や少しのスキルなどの情報は受け継がれます」
「つまり、どういうコトなんだチャオ?」
「要するに、生き返れるのです(厳密に言えば少し違うのですが、言ってもわからないでしょう)」
「生き返れるチャオか!」
ごちゃごちゃしたダークチャオは、ポヨをビックリマークにしました。
「ただし、誰でも転生できるってわけじゃない」
プヨプヨと浮かぶダークチャオが言います。
「生前の育て主に、真に愛されていたかどうか。無償の愛を注いでもらっていたかどうかで、転生する資格があるか否かが決まる。というわけで、今からお前の生前のありとあらゆる行いを読み上げさせてもらう。いくぞ」
そう言って、プヨプヨと浮かぶダークチャオはどこからか巻物のようなものを取り出して、ごちゃごちゃしたダークチャオの生前の行いを読み上げていきます。
身長や体重といった情報から、平均起床時間、平均就寝時間、生涯総歩数、生涯総飛行時間、食べた木の実の個数、コケた回数、あくびをした回数、などなど…。
その後、生きている間に行った善行、悪行なども洗いざらい読み上げられました。
「…よって、お前は転生しない場合、天国へ行くコトになる」
「…えっ、あ、はいチャオ」
途中からすっかり寝入ってしまったため、ごちゃごちゃしたダークチャオは話を全然聞いていませんでした。
でもとりあえず、天国へは行けるみたいです。
「では次に、転生資格があるかどうかです」
そう言ってプヨプヨと浮かぶヒーローチャオも巻物のようなものを取り出し、そこに書かれている文字を読み上げていきます。
「えー、生きている間に撫でられた回数、37489回。キャプチャーさせてくれたカオスドライブの数、17562個。同じくキャプチャーさせてもらった小動物の数、12438匹…」
ごちゃごちゃしたダークチャオはまた眠くなってきましたが、なんとかがんばって寝ませんでした。
「…よって、貴方は育て主に非常に深い愛情を注いでもらっていたと判断します。よって、貴方に転生資格があるコトを認めます」
「それがあると、どうなるチャオ?」
「貴方が望むなら、転生するコトが可能です。転生せずに、天国へ行くコトもできます」
「うーん、天国にも行ってみたい気もするチャオが…やっぱり、ご主人様のいるトコロがいいチャオ」
「では、転生するのですね」
「はいチャオ」
「わかりました。では、この穴に入ってください」
突然、音も無く空中に穴が開きました。
奥は、光に包まれてよく見えません。
「この穴に入れば、貴方は再び生を受けます。第二の人生が始まります」
「わかったチャオ。色々ありがとうチャオ」
ごちゃごちゃしたダークチャオはお礼を言って、穴に入っていきました。
「よい人生を」
「よい人生を」
プヨプヨと浮かぶヒーローチャオとダークチャオは、その姿を見送りました。
…
ごちゃごちゃしたダークチャオは、自分は今、何かに包まれているのがわかりました。なんだか、懐かしい気分でした。
しばらく、体から力がすっかり抜けてしまっていて全然動きませんでしたが、しばらくすると、優しく、ゆっくり抱き上げられたのがわかりました。
ごちゃごちゃしたダークチャオは、両手を突き上げて、『何か』から出ようとしました。力いっぱい両手を動かすと、『何か』が割れて、外の光が漏れてきました。
もうひと踏ん張り力を入れると、『何か』は完全に割れて、地面にポトリと落ちました。ソレが卵の上半分だったというコトには、今は気づきませんでした。
卵から出て、一番最初に見たモノは、見慣れたご主人様の顔でした。
ご主人様は満面の笑顔で出迎えてくれました。でも、頬には一筋の涙の跡が残っています。
ボクのために泣いてくれたんだと思うと、ごちゃごちゃしたダークチャオは嬉しくなりました。
そして、ごちゃごちゃしたダークチャオは、ご主人様に飛びつきました。
そして大きな、とても大きな声で、大好きなご主人様の名前を呼びました。
「ただいま、えっぐまん!」