そらをとぶちゃお!

チャオの背中には、かわいい羽がついてるいちゃお!
今時羽もないなんて、おっくれてるちゃお~!
でも、ちっこいからお空を飛ぶことは出来ないちゃお。

こんな羽で飛べっこないちゃ…、あれ?
ガーデンのお友達が、お空を飛んでるちゃお?
そ、そんなの気のせいちゃお。こんな羽で飛べっこな…、はう!
みんな飛んでるちゃお!ボク以外みんな飛んでるちゃお!!
ど、どしてちゃお?どしてこんな羽で飛べるちゃお?
う~ん、う~ん、…。


こうしてチャオは、ぼけたんに相談しました。
ぼけたんは、なんでこいつ、オレなんかに聞きに来るんかなあと戸惑います。
今や、いい年こいたおっさ…もとい、おにいやんと見知らぬ園児とが一緒に戯れてるだけで、逮捕されるようなご時世です。
しかし、かわいいチャオを見過ごすなんてできません。
せっかくぼけたんを頼りに来てくれたのです。
ぼけたんは、チャオが大好きです。チャオも、ぼけたんが大好きです。
「じゃあ、オレが特訓してやるよ。」
「ほ、本トちゃお?わ~いわ~い。」

ぼけたんが特訓してくれるんで、チャオは大喜びです。
「わ~い、わ~い。」
「じゃあ、早速いくよ。」
ぼけたんは、大喜びなチャオを抱っこします。
抱っこされたチャオは、ぼけたんに抱っこされて、きゃっきゃとおおはしゃぎ。
「そ~れ!」
ぼけたんは、おもむろにチャオを放り投げました。

こてっ。

チャオはこけました。
「だ、大丈夫か?」
こけたチャオにぼけたんは慌てて駆け寄ります。
「あいたたちゃお…、なにがおきたちゃお?」
「どうやら、着地が出来ないみたいだな。」
すっくと立ったチャオを見て、ぼけたんが言いました。
「着地ちゃおか?」
チャオには、なんのことやら分かりません。
「ほら、お前はあそこからここまで飛んできたんだよ。」
ぼけたんは、さっきまで二人がいた場所を指差します。
「ほ、本トちゃお。ボク、ここまで飛べたちゃお。」
チャオはなんだか、喜びがこみ上げてきました。でも、飛んだ実感は在りません。

「よ~し、じゃあ特訓を続けよう!!」

ぼけたんは、何度もチャオを放り投げます。
しかしチャオは、毎度毎度着地の失敗で、体中が痛くなってきました。
最初のうちは、ぼけたんに抱っこされたら大はしゃぎだったのですが、だんだんぼけたんに触られるのも嫌になってきました。
抱っこされたチャオは、おもっくそ体をのけぞらせ、ぼけたんの手から逃れようとします。
ぼけたんもチャオを抱っこしづらくなってきました。

こいつ、ヒトが特訓に付き合ってやってるのに、やる気ないんかよ!

ぼけたんは思わず、チャオをおもっくそブロック塀目掛けて投げつけました。

こてっ。

倒れるチャオがかわいそうに思い、ぼけたんは駆け寄ります。
チャオは立ち上がると、悲しげな表情をうかべ、がっくしと肩をおとす。
「は~。」
そんなチャオを見て、ぼけたんはやさしく言葉をかける。
「どうした?もう特訓は飽きたんかい?空を飛びたくないの?」
ぼけたんの言葉も、チャオにはうわの空です。
「こんな痛い思いをしても、飛べないちゃお。はあ、チャオはなんで生きてるちゃお?人生の意味を教えてほしいちゃお。」

ぼけたんは、あきれました。
ちょっと痛い思いをしたからって、空を飛びたいという一大決心が揺らぐなんて。
それに、たかだか愛玩動物ごときが、何が悲しくて人生の意味を知りたいのでしょう?
「そんなん、こっちが知りたいわ。」
ぼけたんは思わずはきすてる。

「ちゃお?」

それを聞いて、チャオはにたにたと生き生きしだします。
「へ~、ぼけたん、人生の意味を知らないちゃおか?ぷぷぷ。毎日アホな作り話の妄想ばかりしてたら、そんなもんちゃおね。」

ぼけたんは、驚きます。
おいおい、オレは愛玩動物の人生の意味を、こっちが知りたいって言ったんだぞ?
こいつ、何言ってんだ?

そんなぼけたんをよそに、チャオはさらに続けます。
「人生の意味も分からないだなんて、チャオはぼけたんみたくは、なりたくないちゃお。」

ぼけたんは、生まれて初めて怒りをおぼえました。
これは、特訓に付き合ってくれたヒトに言う言葉でしょうか?
これが、夢の実現のために尽力してくれたヒトに言う言葉なのでしょうか?
ぼけたんの怒髪は天を突き、身体が黄金色に輝きだす。

ぼけたんは、おもっくそチャオを蹴り飛ばしました。
「ふう、これくらい飛べれば、やつも満足だろ。」
チャオは、お空の彼方まで飛んできました。


後日ぼけたんは、チャオ虐待の罪で逮捕されちゃいました。



おしまい。

チャオを飛ばす時は、紫色のチャオチカラを注ぎ込もう!
したら自然と飛べるようになるぞ!

この作品について
タイトル
そらをとぶちゃお!
作者
あさぼらけ
初回掲載
週刊チャオ第171号