Some Tresures 1
―夕焼けの浜辺で愛を語る―
もうすぐ日が沈む・・・彼女とこのお日様を見るのも最後となるのだろうか・・・
そう思うと眼前の夕日を見ていられなくなった、これを最後にしたくなかったから。
「私、今日なのかな、明日なのかな?」か細い彼女の言葉に僕は気丈にふるまった。
「明日でも今日でも来るものは来るよ!ほら!夕日がすごくきれいだよ!」と夕日に指をさし眼を背けた。彼女は夕日を見つめ「そうね・・・」と遠くを見つめながらそう言った、そして彼女は僕のほうを振り向いて少し微笑んだ。
そう、その笑顔に僕は魅せられた、一緒に居たいと思った、心から。彼女の微笑みは当時苛められていた僕には慈母の微笑にしか見えなかった。彼女は僕に優しく接してくれた。
そして僕は当然のように彼女を好きになった、もうこれは必然だったんだと振り返ってそう確信する。もう二年も前の話だ僕たちにとっては遠い遠い昔の話・・・・
「見て、月も綺麗ね・・・」日はすっかりと沈んで天頂には月が昇っていた、夕日の情熱的な美しさとは違う神秘的な輝きで僕たちを見下ろしていた。
もうそんなに時間がたっていたのかと思うと深いため息が漏れた、彼女は僕を手でこちらに寄せてただ月を見ていた。僕もされるがままに彼女にもたれた、居なくなってしまうのは彼女のほうなのに、彼女のほうが強いのか、しっかりと前を向いて海を見ている。
突然彼女が僕を押し返した。「どうした?・・・・!」振り向くとすでに彼女の体は薄いピンクのに覆われていた。
どんどんと濃くなっていく繭に僕は動転してボロボロと涙を流しながら嗚咽した。それでも彼女は落ち着いた声で・・・
「愛してる、ずっとみてるから・・・」
「いやだ・・・いやだ・・・逝かないでっ・・・・」
繭にしがみつき頭を何回もぶつけた、でも繭は割れることなく彼女の姿を隠していく。
彼女は最後に微笑み、その姿を完全に隠した。
声も出なかった、頼りにしていた、愛していた人を亡くしてしまった現実を受け入れることができなかった。
無言で涙を流し空の慈母星を見る・・・・・・・
End