小説事務所 「Repeatを欠けろ」
     一昔前に録画したビデオテープを見つけた。
 私はそのビデオを再生する為に、埃を被ったプレイヤーを取り出した。
 今でもこのビデオの内容は覚えていないが……ちょうど退屈してたし、これで暇を潰すのも悪くない。
 端子も差し終え、ビデオ1に入力切換。手にしたビデオテープをプレイヤーに入れて、わくわくしながらテレビの前に座った。
____
 壊れている。
 テープを見終えた私は、真っ先にそう思った。
 テープかプレイヤーかはわからないが、長い間埃を被っていたのが問題だったのだろう。これでは暇潰しに費やした時間が無駄だ。
 そもそも、ビデオの内容がおかしいのだ。
 原因はよくわからないが、私の知るビデオの内容とはまるっきり違う。あんな映像を見た覚えはない。
 あれ?
 おかしいな。
 どうしてビデオの内容を知っているんだろう。
 さっきは知らないと思っていたのに。
 あ、そうか。
 今しがたビデオを見たから内容を知ってるんだ。
 でも、それじゃあなんで内容が違う事を知ってるんだ。
 あれ?
 おかしいな。
 どうしてビデオの内容を知らなかったんだろう。
 さっきは知ってると思っていたのに。
 あ、そうか。
 一昔前のビデオだから内容の知らなかったんだ。
 でも、それじゃあなんで内容が違う事を知ってるんだ。
 あれ?
 おかしいな。
 どうして――
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 ある日、そんな夢を見た気がした。

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