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桜は、季節を過ぎると散ってしまう。
咲いている時間は、とても少ない。
風が吹くと散ってしまう。
すこし油断すると、すべて散ってしまう。
その年にはもう見れない。
生物の命も桜と同じだ。
桜は次の年になればまた見られる。
だが、生物はそうはいかない。
命は一つだけ。
一生は一度きり。
僕の友達もそうだった。
チャオガーデンは桜の咲いている季節だった。
僕は友達と一緒に桜の道を歩いた。
桜はとてもきれいだった。
―いつか見た雪のように。
桜は風に吹かれて散ると、地面に落ちた。
ピンクの絨毯の様だ。
彼と歩いたこの日々は、決して僕は忘れない。
何故なら、これが彼との最期の思い出となるのだから。
突然だった。
彼がガーデンの岩から落ちたのは。
飛ぶのを自慢するためだった。
僕が幼稚園に行っている間の事だった。
彼が飛ぼうとした時、突風が吹いたらしい。
運悪く、風はガーデンの入り口に向かって吹いた。
なので池に落ちず、そのまま・・・。
彼の葬儀には桜が添えられた。
彼は桜の季節に生まれたのだ。
彼が逝ってしまった後、桜の元気が無くなった。
何かが足りない桜になった。
何が足りない。
何だろう。
・・・彼だ。
彼が埋葬されると、桜は散ってしまった。
桜は次の年には咲いた。
―だが、彼は帰っては来ない。
悲しみに暮れる日が一年に一度あった。
それは春だ。
春は彼の命日であり、誕生日でもある。
毎年桜が咲くと、切なくなる。
命日を悲しんだらいいのか・・・。
誕生日を祝ったら良いのか・・・。
答えは誰も出してはくれない。
誰も・・・。
ハッピィーバースディ・・・サヨウナラ・・・。
サクラチル。