ポヨを貸してください

ポヨを貸してください



ポヨを貸してください
ボクにはそれが必要なんです

ボク 気が弱いから 口で自分の気持ちなんて言えません
だから お願いします ポヨを貸してください

キミ達もポヨがどうしても必要だということは よく分かっています
キミ達がココロを表現するには ポヨが必要ですから

でも ボク 考えました
自分の口の代わりに 気持ちを表してくれるものがあったら どんなにいいかって

お願いです 一日だけでも
ポヨを貸してください

そりゃあ確かに ボクがポヨをつけて街を歩いたら お笑いものです
でも 一日だけでも みんなにボクの気持ちをわかってもらえたら どんなにいいかって

だって ボク いろんなことにいやいや付き合ってるんです
それをみんなは いやいやじゃないと思っている
でもやっぱり ボク 気が弱いから そんなこと言えません

たとえばですよ ボク 運動はニガテなんです
でも 友達づきあいで 仕方なくテニス行ってます
でも 親も友達も 好きで行っていると思っています
ボクが毎日フィフティー・ラブで負けていても 好きで行っていると思っています
ボクが実はストレス発散にみんなのラケットを曲げてしまったことがあっても だれもボクが犯人だなんて思っていません

たとえばですよ ボク 器用じゃないんです
でも 三つ年下の女の子に脅されて(一緒に来てくれないなら 好きな子のことをみんなにばらすって) 仕方なくピアノ行ってます
でも 親も友達も 好きで行っていると思っています
ボクが毎日同じところを間違えていても 好きで行っていると思っています
ボクがちょっと反抗するつもりで おもいっきりゆっくり弾いて時間を無駄に使ってやっても 「そうそう、ちゃんとそうやってゆっくり弾いて練習すれば 弾けるようになるわよ」って 褒められてしまいましたけど

だから ボクにポヨを貸してください お願いです

あっ いいの? 優しいんだね
じゃあ つけてみる
あっ ちゃんとつくんだね ありがとう

なに? お前それを売って 儲けるつもりで話をでっち上げたんだろうって?
そんなことないよ だってほんとにボクは気が弱いんだ 知ってるだろう?
なに? 気が弱いのも知ってるけれど お金に目が無いのも知っているって?

え? 鏡で さっきつけたポヨを見てみろって?


あ、ダークチャオのポヨになってる


─fin─

この作品について
タイトル
ポヨを貸してください
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第151号