俺はチャオである
目が覚めた時、俺はチャオガーデンにいた。
チャオガーデンには七匹のチャオと、青いハリネズミがいた。
『あれ、あんなチャオいたっけ?』
青いハリネズミは周りのチャオにカオスドライブを与えていたが、中断して俺を保健室に連れて行った。
『なにこれ?』
しかしすぐにチャオガーデンに戻って来たのだった。
チャオガーデンに戻った俺が最初にとった行動は、きのみを食べることだった。
オレンジ色のきのみを二つほど平らげたあと、俺は眠りについた。
チャオレースに初めて参加したのは、起きてすぐのことだった。
俺は他のチャオよりも速くゴールした。
『カオスドライブあげてないのになあ』
しばらくしてから、再びレースに参加することになった。この間も、カオスドライブや小動物は与えられていなかった。俺に勝てるチャオは一匹もいなかった。
俺は青いハリネズミに愛された。ソニックというのが青いハリネズミの名だと、他のチャオは言っていた。俺はソニックに愛されている理由がわからなかった。
その理由を知るきっかけとなったのは、このチャオガーデンにいるシロマというチャオと話したときだった。シロマはこう言った。
「アンタは優秀だからね」
「そうなのかな」
「そうだよ。アンタが来るまではウチが一番だったのに」
俺が優秀だということや、優秀だと愛されるということが、俺にはわからなかった。
俺は崖の上に座り込んでいた。俺は考えても答えを見つけられなかった。
「キミはまだわからなくていいよ」
「え?」
俺は声の主を探したが、見つけられなかった。
少しの時間が経った。俺は水色の繭に包まれた。繭から出たとき、俺の姿は変わっていた。
『ダークハシリにしては色が変だなあ』
池にうつった自分の姿を見ると、そこには金色に輝いている体があった。三本の角には緑色のラインがあった。
周りのチャオは俺を奇妙なものを見るような目で見ていた。
俺は他のチャオとは違って、変なのかもしれないと思い始めたのだった。
「確かにキミは他のチャオとは違うね」
「お前はだれだ」
返事はなかった。
レースだけでなく、カラテにも参加することになった。カラテの世界でも俺に勝てるチャオは、当然いなかった。俺はシロマとの会話を思い出していた。
ほどなくしてソニックがおでかけマシーンにチャオを放り込んでいるのを見た。そのチャオはそれきりチャオガーデンからいなくなった。代わりにツヤツヤした黒色のタマゴがやってきた。
疑問を持った俺は、試しに"あの声"に話しかけてみることにしたのだった。
「どうしてあのチャオはいなくなったんだ?」
返事はすぐに返ってきた。
「ここにあのチャオは必要なかったんだよ」
「あのチャオはどこに行ったんだ?」
「外だよ」
「外にはなにがあるんだ?」
「色々なものがあるよ。外はすごいものだらけで魅力的だよ。キミよりもね」
すごいとは魅力的なのだと知った。だから俺は愛されたのだ。
レースが開催された。シロマとの一騎打ちだった。俺は勝った。圧勝だった。
「アンタはすごいね。ウチじゃあアンタにはかなわないよ」
俺はチャオガーデンで一番強かった。
じゃあ外はどうなんだろう。外では一番じゃない。
「そうだよ。チャオガーデンの中ではキミが一番だけど、外では一番じゃない」
俺は悔しいと思っている。
外に行ってみたいと思った。
でも、チャオガーデンにはシロマがいた。だから外に行きたくないとも思っていたのだった。
俺は池に映った自分の顔を見た。
俺の三本の角に入っていた緑色のラインは赤色に変わり始めていた。
そして、俺の今の感情を知った。
シロマが灰色の繭に包まれた。
繭がなくなるとシロマはいなかった。
「シロマは愛されなかったんだ。キミがいたから」
「そうだね」
もうチャオガーデンにシロマはいなくなってしまった。
俺がチャオガーデンにいる理由もなくなったのだった。
俺はおでかけマシーンに向かった。
「キミは外に行くんだね」
「行くよ」
「じゃあ、また会えるね。ばいばい」