贈り物。
もおすぐ私の大好きなご主人様のお誕生日。
なにを贈り物にしよーかなぁ。
私のご主人様はそりゃあ、ゲームが大好き。
だから、新ソフト買ってあげたいなぁ。
それともケーキ作ってあげよっかな。ご主人様はヨーグルトが大好物だから、ヨーグルトチーズケーキなんか喜びそう・・。
・・でも・・。
私は私は普通のチャオ。
お金もってないし、このまんまるのお手手ではお料理もできない・・。
いつもご主人様は私のためにいろんなことしてくれるのに・・私はご主人様に何にもしてあげられない・・。
でもっ☆でもっ☆
この日は特別な日だから・・私にできることで・・なにかしてあげたいなっ☆そして、ご主人様に心から喜んでもらいたい☆
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もうすぐあいつの誕生日か。
俺は仕事中、ずっとあいつへの贈り物のことで頭がいっぱいだった。
去年。俺は自分の誕生日に自分でプレゼントしたんだ。あいつを。チャオが街でブームだったから、ちょっと高いけど、思い切って店に入ってみた。そしたら、店のおやじが、「ちょうど生まれたてのかわいいチャオがいますよ」といって、お前を見せてくれたんだ。雑種だから手ごろな値段だったし・・それにそいつを一目見て、欲しい・・と思ったんだ。
はじめは育て方が意外とめんどうだし、エサ代もばかになんねぇから焦ったけど、今はあいつなしの毎日なんて、想像できねぇ。
孤独な俺には、お前の存在は他のなによりも大切なんだ。
さて、なにがいいかな。おもちゃかな。高級木の実かな。どっかに連れて行ってやってもいいな。
でもなぁ・・。この不況で、財布がピンチなのが現実だ。遊びにいくにも、仕事の休みがとれなかったし・・。
あいつが一番喜ぶこと・・・。おれにできる贈り物ってなんだろう。
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そしてご主人様とチャオのお誕生日になりました。
「誕生日おめでとう」
ご主人様はチャオをおひざにのせて、笑顔でいいました。
今日のチャオはいつもよりおっきなハートをだして、きゃっ、きゃっと大喜びしています。
すると、チャオがひざからおりて、オカリナをとりだし、吹き始めたのです。
ご主人様はすごくびっくりしてしまいました。
だって、このオカリナはご主人様の物だし、自分のチャオがオカリナをふけるなんて、はじめて知ったのです。この日のために、チャオが一生懸命練習したことを、ご主人様はわかりました。
それはそれは、素敵なメロディでした。
今は冬なのに、そこだけ春のようなあたたかなメロディ。
ご主人様への「ありがとう」「だあい好き」が、部屋いっぱいに広がっていきます。
ご主人様はほんとうに嬉しくて・・心が熱くなりました。
「ありがとう・・」
突然、オカリナのメロディにあわせて、ご主人様が歌いだしました。
「ありがとう。
君は、希望とやさしさを教えてくれた。
自分より大切なものがあることを 教えてくれた。
君が生まれた聖なるこの日。
君と出会えた聖なるこの日に
永久の感謝の詩をささげよう。
君にありがとう。
君を生み出したこの世界にありがとう。」
ご主人様は、文を書くのがとっても苦手で、ましてや、詩なんて、生まれて初めてでした。
でも、どうしても、今の自分の気持ちをのこしておきたかったのです。そして、そのことをチャオに聞いて欲しかったのでした。
普段無口で、手紙もメールも書かないご主人様のことを、チャオはよく知っていました。そのご主人様が、水色のカードにしたためた詩を、自分の吹くオカリナのメロディにあわせて、静かにうたってくれているのです。
チャオは詩の言葉の意味も少しはわかりました。
いいえ、それを詠う、ご主人様の、声や姿だけで、充分に胸がいっぱいになりました。
「スター!!」
チャオは自分の名前を呼ばれると、ご主人様に飛びつきました。
ご主人様はいつもより、強く、強くチャオを抱きしめました。
☆おしまい☆
チャオ☆お誕生日おめでとー。