お出かけマシーン
「一度さようならをするとそのチャオとはもう二度と会えません。それでもいいですか?」
「はい」
「二度と会えないのですよ!?本当にいいのですか!?」
「はい」
「もうこの先、永久に会えないのですよ!?あとになって後悔しても遅いのですよ!?ずっとずっと会えないのです…。それでもいいのですか!?」
「はい」
「……ッ!こ、このひとでなしッ!ろくでなしッ!鬼ッ!悪魔ッ!冷血人間ッ!サドッ!」
「…」
「貴方にはやさしさというものは無いのですか!?思いやりというものは無いのですか!?貴方が今、手に持っているチャオ…。この子が貴方のことをどれだけ思っているのか…考えたこと無いんですか!?」
「…」
「何とか言ったらどうなのです!?黙っていては何もわかりません!貴方には感情すらないのですか!?こんな非人間に虐げられているチャオのコトを思うと…。うっ、うっ……」
「…」
「グスッ、グスッ…。失礼しました……。最後にもう一度聞きます…。貴方はこのチャオとさようならするのですか……?」
「…すんません、やっぱやめます」
「…あぁ!わかってくれたのですね!よかった…本当によかった…」
「…」
「貴方は自分の間違いを素直に認めることが出来た…。それは素晴らしいことです。貴方はきっと大きな人間になれます。私、そう信じています」
「…」
「貴方にはチャオブリーダーとしての素質があります。これからも貴方のその、まっすぐな愛情をチャオに注ぎ続けてやってください。ホラ、このチャオも喜んでいますよ!」
「…」
「それでは、ご利用ありがとうございました!またのご利用をお待ちしております!」
「はぁ…。ありがとうございました…」
少年はお出かけマシーンから数歩離れて、そして呟く。
「なんなんだ、ありゃ?」
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少年A「…っていうお出かけマシーンがあればいいな、って思わない?」
少年B「さぁ」
少年A「なんつーかさ、悪い悪いとは言いつつも、あっさりさようならしちゃうじゃん。気に入らない色のチャオが生まれたときとか。でもこれだとさようならする気が少し削がれない?」
少年B「知らね」
少年A「つーかさ、データ削除画面とかでもこういう警告出してくれればよかったんだよ!いや、ゲーム本編の話だけど。そうすれば間違えて削除ボタン押しちゃっても『消すの!?ホントに!?』みたいな警告が出てきて、あわてて気づいてふー危なかった、セーフ♪みたいな?」
少年B「ワケわかんねぇよ。っていうか、一応警告はしてるだろ?『削除しますか?』って」
少年A「あんなんじゃ目立たねぇんだよ!俺てっきりロード決定画面だと思って決定ボタン押したら削除決定画面なんだぜ!?やってられねぇよ!」
少年B「注意を怠ったお前が悪い。100%な」
少年A「違う!コレはメーカーの怠慢だ!訴えてやる!」
少年B「それより、いいの?ハートの実勝手に食われてるよ?」
少年A「…え?あっ……」