~もみじ~
落葉樹の立ち並ぶ並木道を、私は落ち葉を踏みしめながら歩く。紅葉し、紅く彩られた木々に目を奪われながら。
「チャオ~、きれいチャオ~」
「そうね、綺麗ね」
この子もまた、鮮やかな景色に感動しているようだ。
私の抱きかかえているチャオの頭のポヨが、感嘆符を形成したことがその証拠だ。
「ねぇ、」
「ん?」
チャオは首を曲げて、私の顔を見上げる。
「なんで、秋になるとはっぱがあかくなるチャオ?」
「紅葉したからよ」
「なんでコーヨーすると、あかくなるチャオ?」
先ほどまで感嘆符の形だったポヨが、今度は疑問符となってふわふわ揺れる。
うーん…。紅葉のメカニズムについては…。う、うーん…。
「えーっと…。紅葉するとねぇ…。…そう、恋。恋よ」
「こい?お魚チャオか?」
「そうじゃなくてね。秋は、恋の季節だからよ。みんな好きな人の前だと赤くなるでしょ、だからよ」
「じゃあ、はっぱもこいしてるチャオか?」
「そ、そうよ」
ふーん、とチャオはまた前を向いて、私の手の中で紅葉鑑賞に戻る。
何の疑いも無く素直に受け入れるチャオに私は可笑しさを覚えた。
「ふふっ」
「何がおかしいチャオか?」
「別に、何でも」
しばらく歩いていると、前方に人影が見えた。こちらに向かって歩いてくる。
近づいていくと、その人は私の知っている人だということに気づいた。
私が通う高校の――私が密かに憧れている――テニス部の先輩だった。
「よっ」
「こ、今日は」
「散歩?」
「はい、そうです…」
うつむき加減で喋っていると、またもぞもぞと首を動かして私を見上げるチャオと目が合った。
「顔がコーヨーしてるチャオ。こいしてるチャオ?」
「ばっ、ばか。何言ってんのっ」