15話
「失礼します~」
そう言って入ってきたのはどうも三十路は迎えた女性であった。
服装も別にその年齢相応のものだから気にするほどではない。
ユウヤは鋭い目つきでその様子をジッと凝視していた。
その女性はこう話した。
「私二人の担任なんですけども、お送りにきました。」
「ゼルエル君、ラシェルちゃん。もう私は帰るからまた明日学校でね。」
「それでは失礼します」
・・・とまるで風の様にやってきて、風の様に去っていった。
その場に残されたのは、二人の子ども。
ゼルエルと呼ばれた碧色の髪の少年と、ラシェルと呼ばれた紅色の髪の少女。
その二人の姿はユウヤは見るのが初めてだった。
それ故に今の状況が信じられず、口を開いた。
「この二人があの時のCHAOなのか・・・?」
あの水色のからだ、小さな羽根、丸い尻尾。
人間とはかけ離れてたが愛くるしかった姿はどこにもない。
そしてその代わりにと今居るのは随分と可愛らしい二人の子どもの姿。
・・・正直腑に落ちない。納得できない。
「まぁ聞いてくれや 大将。 こいつらがこうなった訳はな・・・」
「・・・」
「CHAOという生き物が遺伝子生物と称されるのが・・・理由だ。」
「遺伝子・・・生物・・・?」
「ちょいと長くなるから少し覚悟してくれよ」
思わず生唾を飲んだ。
手持ちのメモ帳を乱暴に開けてそこにペンを押し当てる。
いつでも話して良い。
それを悟ったのかレイヴァンもゆっくりと口を動かし始める。
「・・・CHAOという生き物の特性を調べていく内にだんだんと分かっていった事なんだが・・・
まず俺達が一番に驚いたのは『他の動物の遺伝子を体内に取り込み、その特徴を発揮する能力』この存在な。
この能力は『外敵の種類が豊富にあればその分成長の可能性がある』ってのが重要なんだわ。」
「何故?」
「あんな弱弱しい生き物がどうやってこの時代まで生き残ってこれたかって話。そう考えれば納得はできる。」
この子ども達がそんな大層な能力をねぇ・・・
疑惑の目をぶつけずにはいられなかった。反応をみればなおさらだ。
異体の知れない視線に戸惑う子と無邪気に微笑み返す子。
今まで戦場に生きてきた俺にとってはあまり関わらないものだ。
「これを俺達はこう呼んでいた 『キャプチャー』スキルってな。」
「・・・・・なるほど。」
「そんでもってこれは全てのCHAOの共通して持っている特性で。この二人にはそれぞれ別の能力があったりするんだが・・・」
「待てよ。 ヒトの姿になった説明は?」
するとレイヴァンは果物籠の中から適当に一つ、取り出しては俺の方に投げた。
ゆっくりと弧を描いて飛んでくるそれは赤くて丸かった。
リンゴだ。 「それでもかじってみな、頭冴えるからよ。」と奴は言う。
流石にこの真っ赤なリンゴをそのまま食べる気はしなかった。
大体皮を剥いて淡い黄色の果肉を食べる 赤い皮は・・・・
赤・・・?あか・・・い 赤い・・紅い・・・
「・・・・・まさか・・・俺の血を?」
「そのまさか!あの時大将の血を体内に取り入れたCHAO達はその生まれ持ったスキルを用いて・・・人間になった。
CHAOは通常ひ弱な生き物けど、人から手に入れた遺伝子は結果、長い寿命を得た。頭脳も発達した。」
「そして・・・長い寿命を得ることができたのは大将の血を受けついだから! つまりだな・・・」
「つまり・・・?」
「・・・・遺伝学的にはこのCHAO達はお前の子どもだ!」