13話

やはり来たな・・・・・
この狭いワンルームの主は侵入者一人を無力化させつつ、思った。
あんな雑に、そして派手にやらかした仕事というのは久しぶり。
素人とお荷物引き連れて、完璧な仕事を一人でこなすという事は相当無茶、無謀。
今更・・・本当に今更だが、溜息だ。
そして今
片手で押さえつけているこの少女・・・
こいつが何者なのか・・・何の目的でやって来たのか・・・・。
思いつくものは二つだけ。
その内の一つはここにはないから安心だが、もう一つはと言われたら安心はできない。
何せそれは俺自身の命が狙われている可能性だから。
確認する為、簡単な尋問をする。
それくらい知っているだろうな・・・
「何が目的だ?」
小柄な身体はこの言葉に動揺したのか小さく震えた。
しかしそれ以上は何も教えてくれなかった。
ただうつ伏せになってだんまりを続けるだけ・・・ らちが開かない。
銃口を向けたまま次はボディチェックをする。
「・・んっ ちょっ・・・・」
「何がちょっと?」
「・・・・」
またもだんまりを続ける彼女に対し、俺もボディチェックを続ける。
手を伸ばし鎖骨辺りに触れた瞬間だった。
「きゃっ!やめて!」
不意を突かれた。
あんな喘ぎ声を出すとは思わなかった。
その一瞬で、その少女は俺の拘束を自力で振り解いたのだ。
次に俺が銃口を向けた時、彼女もまた武器を手に持っていた。
どうやら俺の物らしい 咄嗟に手に掴んだのだろう。
短銃とはいえそれなりの銃口を持つそれは、少女のあんな細い腕では反動でまともに撃てない筈。
しかし銃に関して素人ではなさそうだ。
「その銃は・・そんな小柄な奴には扱いきれないな。」
「なめないでくれる?これでも銃器には飽っきるほど触れているんだから!」
「オモチャと一緒にするな」
「な・・・なによ! 人の身体勝手に触っておいて!」
顔を真っ赤にして反論するのはただ子どもっぽいのか、恥ずかしがってるのか・・・。
これはあの件と関係性は薄いな・・・ 偶然か?
「大人しくしておけば・・・手荒な真似はしない。」
「・・・麻酔銃で?」
「早撃ちには自信がある、それに麻酔銃か実弾かよりも先に頭に当てる事のが重要。」

!?

刹那、銃声が一発響いた。
被弾した箇所はスプリンクラー、 一時的にスモークの役割を果たしたそれは敵の姿を隠した。
男は咄嗟にトリガーを引いたが遅かった。
この水びたしの部屋からは完全に脱出されていた。
侵入者の跡は部屋のどこにも微塵も見当たらない。
見失った が策潰えたという訳ではない。
男の手には定期入れが握られていた。
もちろん中身はあるし元々この部屋にあったものではない。

呆けていた時ポケットが小刻みに揺れた。
画面を見て、奴からの電話だという事を知る。
「先客がお待ちか・・・」
散らかった部屋から短銃と弾だけ取ってまた仕事場へ向かった

このページについて
掲載号
週刊チャオ第332号
ページ番号
18 / 31
この作品について
タイトル
Lord
作者
キナコ
初回掲載
週刊チャオ第319号
最終掲載
2009年5月12日
連載期間
約1年17日