第11話 ハッタオスエメラルド
高速で走る魔法を使えるようになったソニクサ。
そのソニクサの放つ衝撃波によって敵の二人は倒された。
「あれが魔法……!?」
敵は初めて見た魔法に驚いている。
その隙をアイちゃんがついた。
「アイスランス!」
「う、うわ!」
こうして四人もいた敵はたちまち全滅した。
ソニクサとアイちゃんの勝利だ。
「すごいソニクサ!」
「へへっ、とぅーいーじーだぜ!」
「本当にすごいよ、ソニクサ。だってさっきソニクサが使った魔法、この世界には存在しない魔法に見えた」
「わっつ?どういうことだよ」
「自分が走る速さを操る魔法なんてないってこと。きっとソニクサが異世界から来たからこの世界にない魔法を使えるのね」
自分にしか使えない魔法。
ソニクサはますます自分が勇者としてこの世界に呼ばれたのだと実感した。
亜音速で剣を振るえば衝撃波でチャオも粉々に切り刻める。
ようやく勇者としてのアイデンティティが確立できた気分だ。
「やっぱりエメラルド異世界説は本当だったんだわ」
「エメラル……?なんだそれ?」
「私たちの世界には魔法の力を司る、ハッタオスエメラルドという宝石があるの。それが異世界より現れてからチャオは魔法を使えるようになったとされる学説。いいえ、学説として提唱されるよりもずっと前から神話のように言われてきたことなの。チャオには本来魔法を使う力なんてなくて、異世界から来たハッタオスエメラルドによって魔法の力を与えられているんだ、ってね」
「ふ~ん、この世界も複雑なんだな」
「だけどあなたも異世界から来て、そうしたらこれまで存在しなかった魔法をあなたは使った。それってつまりそういうことでしょ?」
「あ? どういうこと?」
「ソニクサはハッタオスエメラルドみたいにこの世界を大きく変える存在だってこと!」
アイちゃんにそう言われてソニクサは嬉しくなった。
かつてはただのそっくりさん芸人だったのに今は勇者だと見てもらえる。
それならアイちゃんの言ったとおりに俺がこの世界を変えてやるとソニクサは思うのだった。
ソニクサたちは目指す。
ヒヤリッコ王国の城を。
ヒヤリッコ王国はメラメラ王国との長い戦争に疲弊している国であった……。
~~メラメラ王国~~
メラメラ王国では次の戦いに向けて王が演説していた。
「我々チャオはかつて魔法の力を持たなかったと言う。しかしハッタオスエメラルドがこの世界に来たために、我々チャオは魔法を覚え、さらには戦うことを覚えてしまった。今の苦しい戦争はひとえにハッタオスエメラルドによって引き起こされた厄災と言う他ない」
メラメラ王国の兵士たちは王の演説を静かに聞いている。
この国のチャオは火の魔法に長ける者が多い。
彼らは口を閉じ、しかし心の奥底では闘志を燃やしていた。
その闘志に国王は薪をくべる。
「ゆえに我々はハッタオスエメラルドを支配下に置き制御することでこの世界から戦争を退け、平和を愛するチャオに戻らなくてはならない。その神聖なおこないを邪魔するのがヒヤリッコ王国である。かの国は我々にハッタオスエメラルドを渡すまいと長きに渡り戦いをしかけてきている。ハッタオスエメラルドの眠る山、ホッカホカマウンテンに我々が進軍することをヒヤリッコ王国は阻み続けてきた!これはこの世界に生きるチャオとしてあるまじき行為である!ゆえに我々は悪しきヒヤリッコ王国の者どもを打ち倒し、その先にある平和を手にしなければならないのだ!!」
「オオオォォォッ!!」
そして兵士たちの中に一人、異様なまでの闘志を燃やす者もいた。
そのチャオの名前はヒーツ。
南の大陸で最強の火災と呼ばれる、強い火の魔法の使い手だ。
「メーラメラメラァ!ヒヤリッコ王国のやつらを燃やし尽くしてやるメラよぉ!」
盛り上がる兵士たちを見下ろし、王は笑みを浮かべる。
「クックック。公にはしてはおらぬが、我が手には既にハッタオスエメラルドが一つある。ホッカホカマウンテンのハッタオスエメラルドを得れば、世界征服の野望は現実のものとなるだろうな……」
王は自分の手にしたハッタオスエメラルドの存在は伏せたままでいるつもりであった。
その方が、他の国に侵攻する際に有利になるからだ。
エメラルドの存在を知られれば、こちらから侵攻する前に攻撃をしかけられるかもしれない。
ゆえに王は切り札を伏せたままに兵士たちがホッカホカマウンテンからエメラルドを奪ってくることを期待しているのだった。
つづく!!
なんだか今度の敵は手ごわそう~~!!
はたしてソニクサたちは勝てるのでしょうか!?
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