崖の上のポヨ

崖の上のポヨ

チャオガーデンの、遥か上方にいくつも連なる崖の、さらに上の方。
そこに、1匹のチャオがいました。
名前はまだありません。

このチャオはついちょっと前に、オヨギタイプに進化したばかりでした。
そして、最近、おなかが出始めてきたのを気にしていました。

「チャオ、いつもゴロゴロしてるから、デブチャオになったのかも! それだけはいやちゃおー!!」
そう言うとこのチャオは、崖の上に寝転がってじたばたと手足を振って、きゃあきゃあわめきだしました。

ちなみに、このチャオがどうしてこんな崖の上にいるのかというと、ひとえに、ビビりだからでした。
崖の上のタマゴから生まれたのはいいものの、そこから下のほうに飛び降りるというのが、怖くてできなかったのです。


そんなわけで、そのチャオの友達は、
「ぽーよ、ぽーよぽよ、さかなのこー」
崖の上まで飛んでこれる、このガーデン唯一のナイツチャオだけでした。

というわけで、ナイツチャオが、崖の上の、じたばたやってるチャオの所へやってきました。
「がけのー、うえにー、やあーってきたー」
なにやら奇妙な歌をくちずさみながら。
わめいていたチャオも、そのヘンテコな歌をきいて、わめくのをやめ、ナイツチャオにけげんな顔をみせました。

「何ちゃおか? それは?」
「ぽーよ、ぽーよぽよ、ふくらんだー」
ナイツチャオは、そんなチャオのようすなど、こころにも留めず、歌い続けます。

「まんまるおなかの、おんなのーこ」
「きっ、キサマっ!!」
名無しのチャオは、今や顔から火が出んばかりの思いでした。
もちろん、ナイツチャオが自身のおなかの出ているのをブベツしたのだと思ったのです。
名無しのチャオは、ナイツチャオを崖の外にけっとばしました。
「いたっ!」
ナイツチャオが叫ぶのも気にせずに。

でも、そのとき名無しのチャオに、思ってもみないことが起こりました。
崖の上からけおとしたと思ったナイツチャオが、実はその時ちょうど、名無しのチャオの足をつかんでいたのです。
名無しのチャオは足を引っ張られ、ナイツチャオと一緒に、ガーデンの池の中へと落ちていきました。

チャオは、その時初めて、落ちるというのがどんなに怖いことなのか理解しました。
今まで何度も崖の上からおりようとイメージトレーニングしてきた、そのどのトレーニングよりも怖かったのです。
じゃぼん

大きな音と水柱とともに、2匹は水中へと押し込まれました。
名無しのチャオは、その中で、自身がサカナになるのを感じました。

名無しのチャオは、すぐそばによこたわるナイツチャオをそのひれで救いあげました。
そのまま、2匹とも、原っぱへとよじのぼりました。
ナイツチャオは、けふんけふんと、口に含んだ水を地面にはきだしてから、言いました。
「ちゃおちゃおちゃっちゃーちょぺろぺ?」
「何ちゃお?」

でも、名無しのチャオが何度よびかけても、ナイツチャオは、わけのわからない言葉しかしゃべってくれませんでした。

そのうちに名無しのチャオは、自分の目線が、妙に高い位置にあるのに気づきました。
名無しのチャオとナイツチャオは、ちょうど同じぐらいの背の高さだったのに・・・
何気なく下を見た名無しのチャオは、口をあんぐりとあけました。
なんとまあ、驚くべきことに、すごいですよ? 名無しのチャオは、女の子の体になっていました。
大事なことなのでもう一回言います。女の子の体になっていました。

「ちゃおー!? こ、こ、これは一体、誰の陰謀ちゃおか!?」

名無しのチャオは、おそれ、おののきました。
名無しのチャオはもちろんのことオヨギタイプでしたから、もちろんのことサカナになるイメージトレーニングぐらいはすませていたのですが、
もちろんのこと女の子になるイメージトレーニングはまだしたことが無かったんです。

名無しのチャオ、いや、今は女の子の名無しのチャオははっとしました。
これは全て、ナイツチャオの歌の通りなんだと。そして歌には、まだ続きがあるふうだったことも、女の子は知っていました。
女の子は、急いでナイツチャオを探しました。
しかし、側にいたはずのナイツチャオは、どこかわからないところへ行ってしまっていました。
女の子は、どうしたらいいのかわかりませんでした。

どこかの誰かの小説みたいに、夢オチであることを期待しました。
で、ほっぺたつねってみたけど、何も起こりませんでした。

この作品について
タイトル
崖の上のポヨ
作者
チャピル
初回掲載
週刊チャオ第331号