~冬はあったかい~

パチパチ、パチパチと音を立てながら、暖炉の中の炎は赤々と燃えている。
その炎の前に、ちょこんと僕のチャオが手をかざして座っている。

近づきすぎると危ないぞとは言っているのだが、暖炉の暖かさがお気に入りのようで、気づくと暖炉に手をかざしている。

「あったかいチャオ~」

目を細めて、心底そう思っているんだろう、外に出た途端空気に溶け込むような声でチャオはそう言った。
そんなチャオがちょっとうらやましくなって、僕も暖炉の前に座り込む。

「あったかいな」
「あったかいチャオ~」

僕の『あったかい』の後に、さっきと同じ声でチャオは『あったかい』と言った。

そのまましばらく暖炉にあたってから、立ち上がって僕は暖炉から離れる。

「う」

寒い。

僕の体はまだ火が恋しいようで、暖炉から離れると、さっきより寒く感じた。
全く何のために火にあたったのかと、苦笑が浮かぶ。

「ああ、寒い。だから冬は嫌だ」

そう愚痴っぽく呟くと、僕のほうを振り向いて、チャオが意外なコトを言ってきた。

「そうチャオ?冬はあったかいチャオよ」
「冬が、暖かい?」

何で冬が暖かいのか、考えてもわからなかったから、僕は訊いてみた。

「だって、夏にだんろにあたってもあったかくないチャオ。冬にだんろにあたれば、あったかいチャオ」
「…ふぅん」

チャオはそう言うと、また暖炉に手をかざす。
僕はその答えを聞いて、ほんの少し呆れた。
そんなコト、一日中暖炉の前で過ごしてるお前だから言えるんだ、まったく。
そう思ったけど、言わなかった。冬は暖かい、か。

「ふぅ」

一つ息を吐いてから、僕はまた暖炉の前に座り込む。あったかい。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第202号
ページ番号
1 / 2
この作品について
タイトル
~冬はあったかい~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第202号