~冬はあったかい~
パチパチ、パチパチと音を立てながら、暖炉の中の炎は赤々と燃えている。
その炎の前に、ちょこんと僕のチャオが手をかざして座っている。
近づきすぎると危ないぞとは言っているのだが、暖炉の暖かさがお気に入りのようで、気づくと暖炉に手をかざしている。
「あったかいチャオ~」
目を細めて、心底そう思っているんだろう、外に出た途端空気に溶け込むような声でチャオはそう言った。
そんなチャオがちょっとうらやましくなって、僕も暖炉の前に座り込む。
「あったかいな」
「あったかいチャオ~」
僕の『あったかい』の後に、さっきと同じ声でチャオは『あったかい』と言った。
そのまましばらく暖炉にあたってから、立ち上がって僕は暖炉から離れる。
「う」
寒い。
僕の体はまだ火が恋しいようで、暖炉から離れると、さっきより寒く感じた。
全く何のために火にあたったのかと、苦笑が浮かぶ。
「ああ、寒い。だから冬は嫌だ」
そう愚痴っぽく呟くと、僕のほうを振り向いて、チャオが意外なコトを言ってきた。
「そうチャオ?冬はあったかいチャオよ」
「冬が、暖かい?」
何で冬が暖かいのか、考えてもわからなかったから、僕は訊いてみた。
「だって、夏にだんろにあたってもあったかくないチャオ。冬にだんろにあたれば、あったかいチャオ」
「…ふぅん」
チャオはそう言うと、また暖炉に手をかざす。
僕はその答えを聞いて、ほんの少し呆れた。
そんなコト、一日中暖炉の前で過ごしてるお前だから言えるんだ、まったく。
そう思ったけど、言わなかった。冬は暖かい、か。
「ふぅ」
一つ息を吐いてから、僕はまた暖炉の前に座り込む。あったかい。