チャオ達の戦争
チャオは戦争を行なっている。
ヒーロー軍団とダーク軍団である。
両者はひとつのきのみをめぐって争っている。
いわく、それはこちらの木から落ちたきのみである。
いわく、それはこちらの木から落ちたきのみである。
両者は互いに譲らず、いつの間にか後世にそれは伝統として受け継がれることになる。
チャオは戦争を行なっている。
ヒーロー軍団とダーク軍団である。
始まりは些細なことだった。ひとつのきのみをめぐって争っていただけだった。
いわく、ヒーロー軍団は無法者の集団である。
いわく、ダーク軍団は無法者の集団である。
両者は互いにいがみ合い、いつの日かそれはすさまじい戦争としてのちの世に語り継がれることとなる。
戦争の被害者A「ワタシはダーク軍団のひとりに拉致され、暴行を受けました!」
戦争の被害者B「オレはヒーロー軍団に一族を大量虐殺された! 賠償を受ける権利がある!」
戦争の被害者C「ヒーロー軍団は我々ダーク軍団の思想、文化を貶め、あわよくば規制しようとしています! 断固阻止すべし!」
戦争の被害者D「ダーク軍団は卑劣な集団であります」
ことが起こったのはその日である。
突如として、両者の領地に大きな爆発が沸き起こった。
それは戦争の傍観者であった、ニュートラル軍団の仕業である。
ニュートラル軍団の一員「我々は世界平和のために、戦争の早期終結を願っていたのです。今回の爆発はそのための犠牲。尊い犠牲でした。お陰で我々は戦争の愚かさを知ることが出来たのですから」
ヒーロー軍団はダーク軍団を理解しようとせず、ダーク軍団はヒーロー軍団を理解しようとしない。
そんな誤解から始まったのならば、この戦争には終わりが来たのだろう。
けれども両者の間にあったのは利害関係であった。
事情を知るヒーロー軍団の元幹部「ええ、その通りです。ワタシたちはダーク軍団の文化が我々にとって何の価値もなさないものであり、更には我々にも経済的な深い事情があって、今回の戦争が起こったのです」
事情を知るダーク軍団の元幹部「ヒーロー軍団が卑劣だというのはメディアの情報操作でした。でも、民はなにもしない。なにも言わない。だから我々幹部は増長し、ことは止まるところなく、進んでしまったのです」
当時、すさまじいバッシングが起こったという。
ヒーロー軍団の民A「そんなこと聞いてない! ダーク軍団の思想は悪だと言っていたじゃないか!」
ダーク軍団の民A「だから我々の文化はすばらしいとあれほど言ったのに!」
ところが彼らは言うだけで、なにもしない。
思うだけで、なにもしない。
チャオのなんたるかを決めるのは、そのチャオがいかな行動をしたかである。
それを忘れ、不平を呪文のごとく唱え、動かず誰かがなんとかしてくれるのを待っている。
両者に違いはない。
違いはない。
ニュートラル軍団のヒーロー軍団派A「ダーク軍団? ああ、あのよく問題起こす奴らだろ? ああいうのがいるから社会はダメになっていくんだよ」
ニュートラル軍団のダーク軍団派A「ダーク軍団の文化規制など断固として阻止しなければならない! ヒーロー軍団は文化を軽視しダーク軍団のチャオたる権利さえ侵害している!」
だが、彼らはなにもしない。
動かず、ただ、誰かがなんとかしてくれるのを待っている。
彼らは魔力のない魔法使いだった。