「CHAOS PREVIEW」 part32

00 CHAOS WORLD CHAOS PREVIEW
Scene3

「君にはすべきことがある」
オルガは俺にそう言ってきた。
「するべきこと……って」
辺りを見回す。
ここに来てから変化はない。
あるとしたらどこからともなくこの少女が現れたこと以外、全く変化はない。
つまりそれはなにもない、というわけだ。
空は変な文字が浮かんだまま。
地には見える範囲にいかなるものも存在しない。
俺とこの少女以外になにも存在しないのになにをするというのか。
「夢のようなものだって、言ったでしょ」
それがいわば超都合よくできたご都合主義のようなものですというような発言であると理解できたのは瞬きした瞬間に周囲が薄暗い廃工場になっていることに一頻り動揺した後であった。
落ち着きを取り戻してから、オルガに聞く。
「ここでなにをしろと?」
「廃工場だからね」
廃工場。
薄暗い廃工場。
人が来ない。
そしてそんなところで少女と二人きり。
ここから連想されるシチュエーションと言えばっ!?
「敵が出てくるわけです」
チャオがいっぱい出てきた。
俺の考えていたものと違うが気にしない。
敵……と言ったな。
ということはあれはチャオではなくチャオスか。
「逃げるぞ」
「え?なんで?」
心底不思議そうにオルガは聞き返した。
なんでもなにもない。
「殺されるぞ」
「戦えばいいじゃん」
オルガは水色のカオスドライブを俺に差し出す。
意味がわからない。
俺は確かにチャオスと戦うことができる。
しかしそれは相手と同じチャオスであるシンバに指示することで間接的に戦っているにすぎない。
そしてカオスドライブなんかシンバは使わない。
それを使うのは強化の能力があるチャオスくらいで、シンバにその能力はない。
そもそも、水色だと?
そんな色のカオスドライブ、存在しない。
気付く。
この世界は夢のようなもの。
正確には予告編、らしいが。
死んでも構わないということか?
「武器なら、そんなものより鉄パイプとかの方がまだいいと思うぞ」
「……」
オルガは俺の顔をまじまじと見る。
そしてはっとする。
「ああ、そっか。君はまだ……」
「なに?」
「君はまだ、戦えないんだったね」
呆然としてしまう。
その言葉をそのまま受け止めるのであれば。
俺は将来的にチャオスと戦えるようになる、ということだ。
どうやって?
どのようにして?
「逃げよっか」
手を引かれてそのまま逃げる。
そんなことせずとも、さっきみたいに場面を切り替えてしまえばいいのに。
俺はやけに冷静になりつつも、疑問に対して脳を回転させていた。

続く

このページについて
掲載日
2009年12月3日
ページ番号
32 / 75
この作品について
タイトル
CHAOS PLOT
作者
スマッシュ
初回掲載
2009年11月3日
最終掲載
2010年7月17日
連載期間
約8ヵ月14日