CHAO SIDE STORY
─また、奴が来た─
トゲまみれの青い体、妙な仕掛けの施されたシューズ
ピカピカ光る珍妙な装飾品・・・
いつもこの庭の仲間たちに食い物や、甘いジュースを分け与えてくれる
俺にも、赤いジュースをくれた事があった
・・・しかし、俺は絶対に、奴に心を許さない、許すものか
なぜなら、油断していると突然捕まえられ、俺達が通ることのできない、
謎の洞窟の奥へと連れ去られていくからだ。
・・・しかし、奴は一瞬で戻ってくる。
連れ去られた奴は、運が良ければそのまま帰ってくるが、
この前連れ去られた仲間は、変わり果てた姿で奴と共に戻ってきた・・・
変わり果てた仲間は、明らかに年老いてた・・・
連れ去られてそれほど時間は経っていないのに、すっかり寿命が尽きかけてた。
しかし奴はそんな事を気にも留めず、他の仲間をなで続ける・・・
一体あの洞窟の先には何があるのだろうか・・・
しかし、それよりも気になるのは、奴だ
──騙されるものか・・・
奴は、“本当の奴”ではない。
俺には判る、奴はここにいるが、奴の“意思”はここには無い
何かに操られ、体だけが動いているだけだ。
本当の奴の意思は、きっと、この世界には無い・・・
どこにあるのかなんて、分かるはずがない、しかし、この世界には無い
それだけは分かる・・・
俺や、仲間たちは、この狭い、閉鎖された箱庭の中だけで生活している。
脱出なんてできやしない、出口には見えない壁がある。
これまでも何度か脱出を試みたが、一度も洞窟の奥へ入れた事なんてなかった
仲間も皆、自力で出るのは諦めている。奴と共に洞窟へ入った仲間は多いが
しっかりと捕まえられているため、外の世界へ出ても、逃げ出せない。
それに、外の世界に出ても、一瞬で戻されてしまう
・・・歳をとった姿でだ。
あの洞窟の向こうは、どうなっているのだろうか・・・
少なくとも、時間の進み方が歪んでいるのは確かだ
だから俺は、外の世界に希望なんか持っていない。
もうすぐ、俺は1歳を迎える
この閉鎖された空間で、これからどんな一生を歩んでいくのか・・・
─ 疲れた、今は眠ろう─
所詮、俺達は箱庭の中で生きるしかないのだ。
第一話 終