チャオの実
「わかるか。なくなるんだ」
中年の男が言う。
「わかるさ。何も残らない」
俺はグレープジュースを飲む。
「お前は何もわかっていない」
中年の男は自らの腕を切り落とした。
「こういうことだ」
中年の男の腕は床の上に横たわっている。
「お前はまだ何もわかっていないようだ」
俺のチャオが灰色の繭に包まれた瞬間が思い出される。
「こういうことではない」
俺の口に入っているグレープジュースの味がなくなった。
「そういうことだ」
俺はグレープジュースを飲み込み、首を上げて中年の男の顔を見る。
「お前は何もわかっていない」
俺の言葉に、中年の男の顔は紅潮した。
「実は取れたんだ」
「死ね」
中年の男の言葉の後、俺はなくなった。