予告編

 チャオガーデンには、今日も人がたくさん来ています。一番多いのは親子連れです。特に小学生ぐらいの女の子とその母親という組み合わせが一番多い。次に多いのが自分のチャオを連れた男子小学生で、互いのチャオを競走させたり、進化形を自慢しあったりして騒いでいます。今はまだ小学生が多いんですが、時間が経てばもう少し年上の人たち、夜になればサラリーマンなどもやってくるでしょう。

 このホテルにチャオガーデンが設置されてから、十年以上の月日が経ちました。このガーデンに最初におさめられた二人のチャオ(タンタンとバンバン)は、転生を繰り返しながら、まだまだ元気に生きています。最初はたった二匹だったチャオが、一般市民の間に浸透していくのに、そう時間はかかりませんでした。チャオを取り巻く状況は今、大きな変化の渦中にあります。

 チャオガーデンに生きる私は何を選び、どう行動すればいいのでしょうか。

「もしかして、私が死んだら悲しみますか?」
「いいや、全然悲しくない」
「あんたが死んだら、私は家中にあるあんたから貰ったものとか、手紙とかを全部焼き払うね」
「それで枯れ木に灰をまくんですか」
「そう。そしたらなぜか桜の花が咲くんだよね、あちこちに。それで市長さんとかに感激されて、褒美を貰えるんだけど、となりの家の意地悪じじいが灰をまいたところ、花が咲くどころか、市長の目に灰が入ってめっさ怒られて……ってそんなわけがあるかー!」

 私は、彼女に安心してもらいたかった。だから、そのためには、私はこの混沌とした心の状態を隠し通さなければいけません。この私の、最も醜い心の部分を……

このページについて
掲載日
2009年7月19日
ページ番号
1 / 23
この作品について
タイトル
チャオガーデン
作者
チャピル
初回掲載
2009年7月19日
最終掲載
2009年12月23日
連載期間
約5ヵ月7日