最終章第六話 かなしみをこえるものをもとめて

チャニック対サウリア。
さっきまではチャニックとチャドーを相手にしていたサウリア。
その攻撃は今や、チャニックのみに集中していた。
チャニックは、さっき以上に攻めあぐねていた。

「ギィヤアアアアア!」
しかし突然、サウリアが叫び声をあげる。
チャークから出てきたチャドーが、至近距離から腫れ物をつぶしたのだ。
そして、それと同時にサウリアの体内から、無数の卵が宇宙空間に飛び散る。
「ギィヤアア」

悲しげな叫び声をあげ、宇宙空間に飛び散った卵を、なんとか一つだけ、サウリアは抱き寄せる。
それと同時に、サウリアの攻撃は止む。
他の卵は地球の引力圏にひっかかり、大気との摩擦でもえつきる。
「ギィヤアアアア~」
サウリアは、悲しげな悲鳴をあげる。

「な、なにが起きたんちゃお?」
今目の前で起きた光景が、理解できないチャニック。
「サウリアの、命の終わりちゃお。」
チャドーがつぶやきます。
「命の終り?」
チャニックは聞き返します。

「サウリアは、その命が尽きる前に、地球へ卵を持ち込もうとしているちゃお。」
チャドーも、究極生命体として生まれた。
その為か、サウリアの気持ちが痛いほど分かった。

「そ、その為に地上を、全人類を滅ぼそうとするちゃおか?」
チャニックは思わず聞き返します。
チャドーはうなずきます。

「そ、そんなことの為に! ゆ、許せないちゃお!」
チャニックは、攻撃態勢に入ります。
「うおおお~!!」
しかし、攻撃に移れません。
卵を抱きかかえるサウリアには、もはや戦意はありません。

「うおおお~!!」
チャニックは、攻撃に移ろうとします。しかし、なぜか出来ません!

「チャドー!!頼むちゃお!オレの代わりにヤツを攻撃してくれちゃお!
 ヤツを、地球に行かせるなちゃお!」
しかし、チャドーにも攻撃は出来ません。

サウリアの瞳は、真っ直ぐチャニックを見つめています。
チャニックはその瞳から、目を離すことができません。
攻撃態勢をとり続けるチャニック。
その攻撃力を維持する為に、チャニックのリングが大量に消費されていきます。
それは、チャニックにもよく解ります。そしていつしか、あと一撃分しか残ってないことも。
サウリアを倒すには、その一撃で十分なのですが。

「く、なんでちゃお?なんで攻撃出来ないちゃお~。このままでは地球が~…。」
落下を続けるチャーク。
大気との摩擦により、次第に赤くなっていきます。

チャニックのリングも尽きかけます。
今一度、攻撃目標をにらみつけるチャニック。
サウリアの、無抵抗な瞳と視線が絡み合う。
「だ、駄目ちゃお。オレには攻撃できないちゃお。」
チャニックは、攻撃態勢を解きます。同時に、残りのリングが一枚となりました。

そのリングが突然、光りだします。
そして、チャニックの体を動かします。
「うわわ~、や、やめろちゃお~。」
チャニックの体は、攻撃態勢をとります。
それは、チャドーも同じです。
「やめろちゃお~、オレは、打ちたくないんちゃお~~!!」

チャニックの叫びもむなしく、チャニックとチャドーは、光りの矢と化します。

光りの矢は、サウリアの卵に命中します。
その時、時が止まります。
チャニックとチャドーのリングは、緩やかに回転しはじめると、徐々に大きくなります。
大きくなったリングは回転しながら、サウリアの卵を包み込みます。
そして、チャークから離れます。
太陽系から離れます。
銀河系から離れます。

そして、別の銀河系にたどり着きます。
その銀河系の一つの恒星系にたどり着きます。
サウリアの卵をやさしく包んだリングは、緑の生い茂った青い惑星に、静かに降りていきます。


その光景は、チャニック、チャドー、そしてサウリアの脳裏に映ります。
それは、一瞬の出来事でした。
時が止まったと思えるほどの。

「リングが、サウリアの卵を救ったちゃお?」
チャニックがつぶやきます。
「いや、カオス系チャオのアレが、救ってくれたんちゃお。」
チャドーが答えます。

「あ、ありがとう。これで我が種族も、生き永らえられる。」
サウリアは命が尽き、塩となって崩れていきます。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第117号
ページ番号
56 / 59
この作品について
タイトル
チャニックアドベンチャー2
作者
あさぼらけ
初回掲載
週刊チャオ第94号
最終掲載
週刊チャオ第118号
連載期間
約5ヵ月18日