1話 冒険という言葉はない
便利すぎる世界 1話 冒険という言葉はない
この世界は、かなり技術が進歩している。様々な場所に転送装置が設置され、星の反対側まですぐ行けるようになっている。それだけではない。チャオガーデンもかなり進化した。人とチャオが会話できたりするのだ。さらに、身の回りのことは全て機械が行う。そんな夢のような生活に不満をもつ者は存在しないはずだった。
「最近の街はどうなっているのか…」
と、真っ赤なダークカオスはもういないとされている小動物達をキャプチャしないようになでながら小屋を出た。
「ふぅむ…昔とはかなり変わっている…」
「ん…?レッドメア?」
街を歩いていると、ダークヒコウタイプのチャオが話しかけてきた。
「……おぉ?ヒットか…!?久しぶりだな…!」
レッドメアのただ一人の友人「ヒット」。彼も小動物を飼っている。
「最近何してたの?」
「え…?あぁ。ひたすら修行かなぁ…」
「修行かぁ…もう使われないよ…こっちじゃ…」
そう。修行という言葉は消えていた。他に聞いている者がいたら不思議がられるが、高速で動く乗り物で移動する人しかいないので聞かれることはなかった。
「そんな言葉が死語か…」
「他にも、冒険とか旅っていう言葉が消えてるよ」
どこにでも数秒で着いてしまう世界。そんな世界に冒険とかいう言葉は不必要なのである。レッドメアは残念そうに「ほぉ…」と言う。二人はしばらく無言で歩いた。
「お…いつの時代になってもここだけは変わらないのか?」
レッドメアが嬉しそうに言った。そこはチャオスタジアム。冒険という言葉が使われていた時にもその場所にあったのだ。
「参加する?武器は預かっておくけど」
「え…?あぁ…剣背負ってるな俺。うむ。じゃあ参加する」
武器は昔と違い禁止されていた。しかし、武器以外は持ち込み可能なのだろう。とレッドメアは思う。
「コースもあまり変わっていないようだな」
レッドメアは8コースだった。どうやら、競馬のように賭けもあるようでレッドメアの倍率は一番高かった。逆に隣にいるソニックチャオは1.1倍とかなり低い。
「よっしゃー!今回も優勝するぜぇ!!」
ソニックチャオが叫ぶとレッドメアも
「俺に勝てる者はいないっ!!」
と叫ぶ。そしてソニックチャオを睨んだ。そしてスタートの合図。ソニックチャオが観客を大騒ぎさせるほどのスピードで走る。
「その程度で観客もうるさいんだな」
大騒ぎの原因はソニックチャオではなかった。レッドメアがスキップをしているかのように走りながらもソニックチャオの少し前で走っていた。
「まだまだ俺は本気じゃないんだぜ!?」
ソニックチャオがスピードを上げる。しかしレッドメアは
「今のチャオってそんなに遅くなったんだな」
と言い、スピードを上げる。ソニックチャオとの差がどんどん開いていく。
「グッオッオッオッ…!!」
「やれやれ…」
レッドメアは、ソニックチャオのスピードに合わせて走る。
「やめときな。絶対勝てないぞ?」
「うるさいっ!!」
ソニックチャオがそう言った瞬間、レッドメアは足場が無いことに気が付いていたので飛んだが、ソニックチャオはそのまま落下した。
「どああぁぁぁっ!?」
「…それに、知能も低下しているようだ」
レッドメアは賞金を受け取った後、ヒットが待っている所まで行く。すると数十人の人にヒットが囲まれている。
「ヒット!大丈夫かっ!?」
「全然大丈夫じゃないよっ!!」
「わかった!剣を渡せっ!!」
するとヒットは剣を高く投げ、レッドメアはジャンプしてその剣を受け取った。