ある日の出来事。
「ふん、お前じゃあ全然相手にならないぜ。」
チャオ空手初段のマックの目の前で、肩で息をするチャオが一人。
彼は、マクド。チャオ空手は3級だった。
「はあ、はあ、だけど、はあ、はあ、ボクは絶対、負けられ、はあ、はあ。」
「まあいい。これで終わりだ。くらえ、ブーメランテリオス!!」
マックの強烈な左フック!!
その威力は、ガーデンの芝生にテリオスの軌道にそった焦げ跡を残すほどだった。
しかし、マクドはなんとかかわす。
「なに?オレのブーメランテリオスが?」
「はあ、はあ、今度はこっちの番だ。いくぜジェット!」
呼吸を整えたマクドは、マックに迫る!
「くっ。」
「ジェットアッパー!!」
今度はマクドの強烈な右アッパー!!
しかし、マックにかわされた。
「へへ~ん。そんなん見切ってるも~ん。お前に勝機はないも~ん。」
マックは顔を前方に突き出し、胸を左右にふりふりさせる。
大技を空振ったことにより、二人のやる気が尽きたのだ。
「は~あ~あ。確かに、スキルもアビリティも、ボクの方が下かもしれない。」
マクドはしゃがみこみ、大あくびを連発する。
「じゃあ、もう降参しろよ。」
胸をふりふりマックは言う。
「は~あ~あ。でも、一つだけボクが勝ってるものがある!」
「なに?」
「それは、気合だ!!」
マクドはマックをにらみつけ、すっくと立ち上がる。マックはまだ胸をふりふりさせている。
「今こそうなれ、ジェット!」
マクドはマックに肉迫!!
「くっ。だが、お前のジェットアッパーは見切ってる。」
胸を振りながらもマックは、マクドの右腕に注意を払う。
しかし、右腕はぴくりとも動かない。
「こ、これは?…!し、しまっ…!」
「ジェットラベンダー!!!」
なんとマクドは右ではなく、左のアッパーを繰り出した。それを見切れなかったマックは見事にくらい、ふっとんだ。
利き腕じゃない方の腕。つまり、逆腕。
その逆腕には、未知のチカラが秘められている。
普段あまり器用じゃない逆腕をもし、利き腕と同じくらい使いこなすことが出来たのなら、逆腕の発揮するチカラは利き腕の比ではないだろう。
「ふえ~ん。」
この一撃でマックは戦意喪失。泣き出してしまった。
「よっしゃあ、ボクの勝ちだぜ!さあ、約束は守れよ。」
激闘を戦った二人は、ガーデンのテレビの前に行った。
「じゃあ、レアチャオ戦記を見るよ。」
にやりと笑うマクド。
「はあ、聖戦士チャミーの再放送見たかったのになあ。」
しょんぼりとするマックを尻目に、マクドはテレビをつけた。
『レアチャオ。それは、ゲムキューユーザーのみに許された、神秘のチャオどものことである!』
ちょうど始まったところだった。
二人のチャオはにこにことテレビに見入る。
しかし、すぐに画面は切り替わる。
『番組の途中ですが、チャオ活動を自粛していたあさぼらけの、復帰会見が始まりました。』
「ちゃお?」
テレビの前で、二人のチャオはあっけにとられる。
テレビの画面には、怪しげな青年が映し出された。
もし夜道を歩いていたら、職務質問なんかせずに、留置所にぶち込まなけりゃいけないほどの怪しさだ。
「はあ、こんなヤツのことなんか、どうでもいいよ。」
テレビの前で二人のチャオの顔が曇る。
ガーデンのテレビは、ソーラーパワーで充電していた。
一度つけると、その溜まったパワーを使い切るまで、消えない。
そのため、ガーデンのおきてとして、テレビは終わるまで見なければならなかった。
二人のチャオにとって、これは拷問だった。
いつしかテレビは終わった。
いつもならテレビに拍手する礼儀正しいチャオであるが、さすがにそんな気は起きなかった。
「なあマクド。」
「ん~?」
「なんで深夜番組がゴールデンに進出すると、つまらなくなるんが多いんかなぁ?」
「さあ?それよか、オールスター感謝祭って、なんで視聴率なくって打ち切った番組の形式なんかなあ?」
二人のチャオは、いつまでもテレビの前でたそがれてました。
おしまい。