雨の日のチャオの森

人里離れた山の中に、チャオたちの暮らす森があります。
美しい緑の木々に囲まれた、とってもすてきなところです。

でも、きょうのチャオの森は、ちょっぴりユウウツになる雨の日です。
いつもは元気な声を森中に響かせているチャオたちも、こんな日はちょっとおとなしくしています。

森一番の大きな木の下で、なんにんかのチャオが雨宿りをしています。

ぼ~っと空を見上げているチャオがいます。
はやく雨がやまないかなぁと思っているみたいです。

そのとなりにいるチャオは、地面に落書きをしています。
何の絵を描いているんでしょう?

いまは、あつい雲に隠されて見えないお日さまの絵です。
このチャオは、雨があんまり好きじゃないみたい。

はやく雨がやんでほしくて、お日さまの絵を描いているのです。
このお日さまのちからで、はやく雨がやむといいですね。

木の反対側にも、ふたりのチャオがいます。
なんだかとってもいいムードで寄り添って座っています。

このふたりのチャオは、恋人同士なのかもしれません。
雨の音も、このふたりにとっては、すてきなBGMになっているようです。

雨のおかげで、いつもより静かになっているチャオの森は、ふたりにとっては、ちょっとした夢の世界なのかもしれません。
ほんとうにいい雰囲気で、ちょっとうらやましくなってしまいますね。

こんな風に、チャオたちにとっても、雨の日はしずかに雨がやむのを待っているのが一番なんでしょうか。
いいえ、そうではありません。

チャオは、水の妖精と呼ばれることもあります。
だから、雨の好きなチャオもたくさんいるのです。

ひとりのチャオが、大きな声で歌を歌いながら小川にむかって歩いていっています。

小川は、降り続いた雨で、いつもより水がふえて流れがきつくなっています。
でも、泳ぎに自信のあるダークチャオは、このくらいじゃないと泳ぎ甲斐がないと言っているみたいです。

でも、やっぱり水のふえた川で泳ぐのはキケンです。
そんなみんなの心配をよそに、ダークチャオは入念な準備体操をして・・・。
あっ、ついに小川に飛び込んでしまいました。

さすがに泳ぎに自信があるだけあって、優雅に泳いでいます。
これなら心配することはないみたいですね。
でも、念のために、泳ぎの得意なヒーローチャオとミズチャオが、いつでも助けにいけるように岸辺に待機しています。

そんなことにはおかまいなしにダークチャオは気持ち良さそうに泳いでいます。
ふつうに泳いだり、立ち泳ぎをして一休みをしてみたりと、いつもの小川で泳ぐのとぜんぜん変わりません。
こんどは、背泳ぎをはじめました。

あれ?
背泳ぎをしたと思ったら、すぐにやめてしまいました。
そして、なんだか慌てて岸辺にもどっていきました。

岸辺にあがったダークチャオは、ゴホゴホとセキをしています。
どうやら、雨のせいで、息がうまくできなかったようです。

ダークチャオは振り返って、小川と空を交互に、にらみつけています。
そして、きょうはこれくらいにしといてやる、と言って森の奥へと帰っていってしまいました。

ヒーローチャオとミズチャオは、顔を見合わせて、思わず笑ってしまいました。
とにかく、なにも起こらなくてよかったですね。

さて、別のところでは、ひとりのチャオがスコップで地面を掘っています。
何をしようとしているのかしら?

分かりました。
木の種を植えようとしているのです。

森で見つけた大切な種を、天の恵みが舞い降りてきている今のうちに植えておこうとしているのですね。

地面に掘った穴に木の種を入れて、そっと土をかぶせます。
そして、チャオは、早く大きくな~れのお祈りのダンスをはじめました。

にょきにょきにょきのたんたんたん。
にょきにょきにょきのたんたんたん。
はやく大きくな~れ。

チャオは熱心にダンスをしています。
チャオの願いどおりに、はやく芽が出るといいですね。

しばらくすると、長いあいだ降り続いた雨もだんだんと小降りになってきました。

雨宿りをしているチャオたちは、もうすぐ雨がやみそうなので、ちょっと嬉しそうにしています。

いいムードだったふたりのチャオは・・・、あらら、いつの間にか寝てしまっています。
でも、とっても気持ちよさそうですね。

しばらくすると、雨がやんで、お日さまが顔を出しました。
あ、見てください、空に虹がかかっています。

チャオたちは、みんな空を見上げて虹を見ています。
お日さまからのすてきなプレゼントに、みんな大喜びです。

でも、ひとりのチャオだけは地面を見ています。

そのチャオの足元には、小さな木の芽が生えてきていました。
大地からのすてきなプレゼントに、こちらも大喜びしています。

そして、もう一度、早く大きくな~れのお祈りのダンスをします。
こんどは、あの虹に届くくらいに大きくな~れと祈っているのです。

いつの日にか、大きくなったこの木をのぼって、あの虹の橋を渡ることを夢に見て、チャオは熱心にダンスを続けています。

ちょっぴりユウウツな雨の日にも、楽しいことはいっぱいあるんですね。

チャオの森に降る雨は、みんなにすてきな夢を運んでくれたのでした。



おわり

この作品について
タイトル
雨の日のチャオの森
作者
懐仲時計
初回掲載
週刊チャオ第14号