嗚呼、君は今そこで
和田須磨という男がいた。
和田須磨がどこからか現れ、住み着いた街。
そこは普通の街であった。
人間とチャオが仲良く暮らす街。
そこで和田須磨は言い放った。
街の人を集めて。
和田須磨「俺は三日後…チャオの世界と人間の世界を分裂させるためにやってきた。
勿論、分裂されたら、互いに一生会えない、
互いに記憶を失うことになる。」
住人達はざわめく。
どういうことなのだ、と。
住人達は混乱する。
住人達は不安感に覆われた。
そして、住人達は絶望した。
その時、住人の一人が大声を放った。
路土裕樹「そんなふざけた話、俺は認めない!!」
その声に、いくらかの人が立ち上がった。
野木政志と寺山楠木と棒田望だ。
彼ら四人は和田須磨と最も仲が良かった者達であった。
それだけでなく、彼らはチャオがとても好きであった。
彼らのまわりには今この時でさえチャオが信頼し、寄り添っている。
和田須磨が何を言ったかは理解できてない。しかし、それでも不安を感じ取り、怯えるチャオが彼らを頼りにしている。
彼らはそんなチャオ達を見て決心する。
四人「俺たちは絶対に認めない!」
四人は一斉に叫んだ。
自分達の信念を。
譲れないものがあると。
その四人は絶望という闇から人々を照らす光にさえ見えた。
だが、和田須磨もまた、譲れないものがあった。
世界を分裂させることが彼の役割。その役割を果たさなければ彼自身の存在が無となってしまう。
それが、特殊な能力を持つ人間の運命。
両方を通すことはできない。
通るのは、どちらか片方の思いだけ。
故に、激突する。
仲が良かった。その事はもう既に、過去。
和田須磨「認めろ!!」
四人「やだ!」
和田須磨「なぜ認めない!」
路土裕樹「嫌なもんは嫌だからだ!!」
和田須磨「なぜだ!くそっ!!俺がアレな人間だからだというのかっ!?くそうっ!!」
野木政志「誰も言ってないってそんなこと」
和田須磨「ふっ、ふっふっふ…ハァーッハッハッハッハ!!」
和田須磨が笑い出すと、まわりの空間が湾曲し始めた。
そして、和田須磨の両手付近が光り、そこからそれぞれ剣が出てきた。
和田須磨はそれを握り、住人の方へ向ける。
和田須磨「ならばっ!!邪魔な貴様等を黙らせるのみっっ!!!」
さらに空間の湾曲は激しくなる。
和田須磨の前に大きな光が発生する。
和田須磨「こいつで貴様等の抵抗も終わりだああああああっ!!!」
棒田望「あいつ!まだ何か出す気だ!!」
路土裕樹「くそ!誰か止めろ!!」
野木政志「なぜか動けないから無理っ!!」
寺山楠木「このご都合主義の空間めっ!」
和田須磨「喰らええええええっ!!!」
光は激しくなり、そしてその中から人間が出てきた。
栗色のセミロングの髪でピンク色のナース服ナースキャップ込みを着ており、申し訳なさそうに微笑む女の子「あの…世界を分裂させてください…」
三日後、世界は分裂した。