雨の中に

田んぼの緑が雨に濡れる 濡れた土に雨が香る
朽ちた木の電柱が黒く染まる 静かな町にしんと雨が降る
錆びたレールに電車が走る 電車の窓にチャオが映る

流れる雨の町を ぼくは見ている
朽ちた電柱が 何度も横切る

眩しい朝の光が冷えた町を照らす 人々が早歩きですれ違う
コンクリートの電柱が無表情に立つ 晴れの予報をテレビが伝える
アナウンスが響く駅に電車が止まる 電車の窓にチャオが映る

流れる人々の背中を ぼくは見ている
電車から降りた人々が 窓から見えなくなる

折り返した電車が帰っていく 元の場所へと帰っていく
朽ちた木の電柱が電車を迎える チャオだけ乗った電車を迎える
チャオの頭の上から浮かんだ心は まだ雨を降らし続けている

流れる雨の町を ぼくは見ている
朽ちた電柱が 何度も横切る

でも人々はまた帰ってくる それだけでいいような気がした
その頃には雨も止んで 濡れた町もきれいに見えた

この作品について
タイトル
雨の中に
作者
ダーク
初回掲載
2012年12月23日